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3モデルが揃う“バガーカスタムの申し子”ストリートグライド、その足跡を辿る

2019.01.25

ストリートカスタムカルチャーから生まれた異端児

いつの時代にもFREEDOMの精神から誕生するカスタムカルチャーを尊重し、シーンを牽引し続けているハーレーダビッドソン。2006年にセンセーショナルなデビューを果たし、瞬く間に人気モデルとなった『ストリートグライド(FLHX Street Glide ®)』は、それを如実に表したモデルと言えるでしょう。

“ストリートシーンで魅せる”バガーカスタムの申し子として生み出されたストリートグライド。“ストリートシーンで魅せる”バガーカスタムの申し子として生み出されたストリートグライド。

それまでのツーリングファミリーは “キング・オブ・ハイウェイ”の名を欲しいままにしてきたとおり、高速道路を使ったロングライドを得意とするモデル群から成るファミリー。旅のための快適装備を満載にした重厚感が魅力であり、その堂々たる姿こそがフラッグシップの証でした。

トップエンドモデルである『ウルトラリミテッド(FLHTK Ultra Limited)』は威厳を誇示する装飾、大きな荷物のためのツアーパック、背の高いウインドシールドを備えたことから“フルドレッサー”とも呼ばれ、その荘厳な姿に羨望の眼差しが注がれました。

2000年代に入った頃より、ウルトラをベースモデルにストリートシーンを駆け抜けるクールなカスタムカルチャーがアメリカで流行となりました。「バガーカスタム」と呼ばれるそのスタイルは、ウルトラからサドルケース以外のパーツをごっそりと取り外し、美しきシルエットを生み出すためのロー&ロングスタイルにボディパーツの加工、そしてクロームメッキパーツの多用やオリジナルのグラフィックで彩られるものでした。フロントホイールも18インチ、19インチ、さらにはそれ以上……30インチを超えるビッグホイールを用いるオーナーもいたほどです。

ベースモデルこそウルトラながら、バットウイングフェアリングを始めあらゆるディテールをコンパクトにまとめ、トップケースをも取り除いた“ストリート仕様のツアラー”に仕上げた。ベースモデルこそウルトラながら、バットウイングフェアリングを始めあらゆるディテールをコンパクトにまとめ、トップケースをも取り除いた“ストリート仕様のツアラー”に仕上げた。

そんなバガーカスタムに「よりふさわしいベースモデルを」と開発されたストリートグライド。ウルトラリミテッドのアイデンティティであるバットウイングフェアリングや高級感はそのままに、スポットライトやトップケースを取り外してウインドスクリーンもばっさりとショート化しスモーク仕様にしました。シートもそれまでのウルトラにはなかった流麗でスポーティな仕様となり、さらにロー&ロングな車体をロープロファイル化。それまでのツーリングファミリーには見られないフレンドリーで扱いやすい斬新なモデルが誕生したのです。

時代の流れに合わせて進化するストリートグライド

2006年モデルとして登場したツーリングファミリーのニューカマー、ストリートグライド。2006年モデルとして登場したツーリングファミリーのニューカマー、ストリートグライド。

2006年にデビューしたストリートグライドは、今振り返ると実に特徴的なモデルでした。エンジンはキャブレター式の88キュービックインチ(排気量1,450cc)のツインカムで、トランスミッションもまだ5速仕様だったのです。翌2007年にはフューエルインジェクション化し、88から96キュービックインチ(排気量1,584cc)へとアップ。さらに6速ミッション化するなど、オートバイとして一気にバージョンアップを果たしました。

2009年式のストリートグライド。フロントホイール径が18インチにアップ、さらにリアタイヤ幅が180mm化するなど、バガーカスタムとしてのキャラクターを強めていく。2009年式のストリートグライド。フロントホイール径が18インチにアップ、さらにリアタイヤ幅が180mm化するなど、バガーカスタムとしてのキャラクターを強めていく。

2008年を経たストリートグライドは、2009年にスタイルを大きく変えます。剛性アップしたフレーム&スイングアームによるクルージング性能のアップはもちろんですが、ウルトラと同じ16インチだったフロントホイールは17インチへとアップ。さらにリアタイヤも180mmへとワイド化。ライディング、スタイリングともに大きなインパクトを持ったモデルへと変貌しました。

2010年モデルのCVOに加わったFLHXSE CVO ストリートグライド。2010年モデルのCVOに加わったFLHXSE CVO ストリートグライド。

2010年にはCVOモデル『FLHXSE ストリートグライド』が登場。ハーレーダビッドソンのオフィシャルカスタムパーツ「Screamin’ Eagle(スクリーミンイーグル)」のパフォーマンスキットによってツインカムエンジンは110キュービックインチ(排気量1,801cc)へとアップ。さらに前後ホイールはゴージャスな18インチ仕様に大径化され、さらにリアサスペンションはダイヤルでプリロード調整ができる油圧式ショックアブソーバー型に。オーディオシステムもスピーカーが増設されるなど、まさに究極のバガーカスタムを実現した一台でした。

翌2011年にはCVOの流れに追随するように、ストリートグライドもフロントホイールを18インチ化。より大きなホイールチョイスも大きなポイントとなる、バガーカスタムの流れを汲み取っていったのです。

よりフレンドリーでスポーティなマシンへ

「プロジェクトラッシュモア」によってオートバイとして大幅にバージョンアップした2014年式ストリートグライド。

ルック、サウンド、フィールのすべての要素を向上させる技術革新「PROJECT RUSH MORE(プロジェクトラッシュモア)」によって大刷新された2014年式のツーリングファミリー。フェアリングカバーを持つウルトラリミテッドや『FLHTCU TC エレクトラグライド ウルトラ クラシック』は水冷機能を兼ね備えた最新のエンジン『Twin-Cooled™ High Output Twin Cam 103™』(排気量1,689cc)へとバージョンアップ。ストリートグライドは空冷機能のみのツインカム103エンジンとなり、CVOから19インチフロントホイールを受け継ぎました。

ツーリングファミリーそのものがターニングポイントを迎えたこの2014年式。ステアリングヘッドとフォーク取付部を改良したパワートレインのマウントプレート型フレーム、さらに41.3mmから49mmへと大径化したインナーチューブを備えるフロントフォーク、刷新されたダンピングパーツにより、今まで以上に快適なライディングが楽しめるメガクルーザーとしての土台が完成。サドルケースは片手でも開閉できるシングルレバー方式が生み出され、以前に比べて使い勝手が飛躍的に向上しました。

ハーレーダビッドソン 2014年式 FLHX ストリートグライド

排気量1,689ccエンジン『High Output Twin Cam 103™』へとパワーアップしたストリートグライド。シルエットも一層流麗になり、さらにライディングを快適にする装備を多く備えることに。排気量1,689ccエンジン『High Output Twin Cam 103™』へとパワーアップしたストリートグライド。シルエットも一層流麗になり、さらにライディングを快適にする装備を多く備えることに。

エアロダイナミクスを強化した新形状のバットウイングフェアリングには4.3インチのカラーディスプレイが内蔵され、先進的なインフォテインメントシステム「BOOM! BOX」をOSとして採用。新たに備わったUSBポートにスマートフォンやポータブルオーディオプレーヤーを接続することも可能になりました。

2015年式では、ワンランク上のモデルストリートグライド スペシャル(FLHXS Street Glide® Special)が誕生。ホイールサイズはフロント19インチ・リア16インチで、インフォテインメントシステムの画面が6.5インチタッチパネルの「Boom! Box 6.5GT」にグレードアップしました。

スタンダードを上回る装備を備えて登場したストリートグライドスペシャル(2015年モデル)。スタンダードを上回る装備を備えて登場したストリートグライドスペシャル(2015年モデル)。

そしてCVOにはCVO™ ストリートグライド(CVO™ Street Glide®)がカムバック。ロワーフェアリングを備えての『Screamin’ Eagle Twin-Cooled Twin Cam 110』エンジンを搭載し、3ウェイスピーカーもセットされ、300ワット4チャンネルアンプをも装備。ホイールはフロント19・リア18インチというスポーティな仕様と、ストリートグライドの最上級モデルにふさわしい装備で固められた一台でした。

2015年に復活したCVO ストリートグライドはさらに個性的なモデルへと仕上げられた。2015年に復活したCVO ストリートグライドはさらに個性的なモデルへと仕上げられた。

ゴージャスなCVOにふさわしく、ギラリと輝くクロームパーツをふんだんに盛り込みオリジナルのパーツも多用と、ストリートグライドスペシャルとの違いを見せつけた。ゴージャスなCVOにふさわしく、ギラリと輝くクロームパーツをふんだんに盛り込みオリジナルのパーツも多用と、ストリートグライドスペシャルとの違いを見せつけた。

この年、アメリカ本国ラインナップに3モデル(ストリートグライド、ストリートグライドスペシャル、CVOストリートグライド)が並び立っていたのですが、日本に上陸したのはスペシャルとCVOの2モデルでした。

ミルウォーキーエイトエンジンとともに

2017年式でもっとも注目を集めたのは、新型エンジン『ミルウォーキーエイト(Milwaukee Eight®)』の登場でしょう。ツーリングモデルには107キュービックインチ(排気量1,745cc)が、CVOには114キュービックインチ(排気量1,868cc)が搭載されました。

それまでのツインカムエンジンを大きく上回るパフォーマンスを実現した新型エンジン「ミルウォーキーエイト」。それまでのツインカムエンジンを大きく上回るパフォーマンスを実現した新型エンジン「ミルウォーキーエイト」。

ピークトルクは126Nm/3,497rpmから150Nm/3,250rpmへと向上し、アイドリングを含め全速度域で低回転化を実現したミルウォーキーエイト。環境性能向上も燃焼効率を上げることで達成しました。新設計のアシスト&スリッパークラッチも採用され、レバー操作が軽くなったほか、1速に入れた際の衝撃をアンチバックラッシュギアによって軽減しています。エンジン強化に加え、操作性もスムーズになっているのです。

ミルウォーキーエイトエンジンを搭載した2017年式ストリートグライド。ミルウォーキーエイトエンジンを搭載した2017年式ストリートグライド。

2018年にはスタンダードなストリートグライドもラインナップ入りし、CVOを合わせるとフルラインナップにはストリートグライドが3モデル並び立つことに。それまでスペシャルに採用されていたフロント19インチ・リア16インチというホイールサイズはストリートグライドが受け継ぎ、ストリートグライドスペシャルはリアを18インチ化させました。

全体的なテイストについても、スペシャルはそれまでのクロームパーツスタイルからダークカスタムモデルへと変貌を遂げたのです。サドルケースもマフラーに覆い被さるようにストレッチされ、バガーカスタムをより追求したスタイルに。ディテールまで凝りに凝った、よりスペシャルなモデルへと飛躍しました。

ハーレーダビッドソン創業115周年記念のグラフィック「レジェンドブルー」仕様のストリートグライドスペシャル。エンジンやマフラー、ホイールなどマシンの軸となる部分をブラックアウトしてスタンダードモデルとの差別化を図った。ハーレーダビッドソン創業115周年記念のグラフィック「レジェンドブルー」仕様のストリートグライドスペシャル。エンジンやマフラー、ホイールなどマシンの軸となる部分をブラックアウトしてスタンダードモデルとの差別化を図った。

さらに快適でソリッドなマシンへ

インフォテインメントシステムが新型「BOOM! BOX GTS」へと進化した2019年モデル。ハンズフリーマイク付きの純正ヘッドセットを無線か有線で接続し、iPhoneを車体とUSBケーブルで繋げば車載ディスプレイのホーム画面上に「CarPlay」が表示され、それをタッチするだけでiPhoneにある対応アプリが使用可能となります。音楽再生はもちろん、電話やメッセージの受け答えが音声あるいは画面タッチやスイッチ操作ででき、一気に先進性を高めた印象です。

ストリートグライドにも最新のインフォテインメントシステム「BOOM! BOX GTS」が搭載。ストリートグライドにも最新のインフォテインメントシステム「BOOM! BOX GTS」が搭載。

ミルウォーキーエイト107(排気量1,745cc)搭載のストリートグライドとさらなる差別化を図るべく、114キュービックインチ(排気量1,868cc)へのパワーアップしたスペシャル。CVOの117キュービックインチ(排気量1,923cc)と3モデルのキャラクターが一層際立つことになりました。

ホイールの変容で見るストリートグライド

高い人気を携えて着々と歴史を積み重ねているストリートグライド。エンジンの変容に伴い強化されたフレームやフットワーク、さらに進化するインフォテインメントシステムとクルーザーとしてますます利便性をアップさせるストリートグライド。しかしそれらはツーリングファミリー全体に与えられている恩恵で、バガーカスタムの申し子たるストリートグライドの特徴を如実に現しているのは、実はホイールサイズの変容です。

ハーレーダビッドソンの伝統的スタイル「FL」を継承する最新モデルの魅力を知るでもご紹介したハーレーダビッドソンの伝統的なホイールサイズであるフロント16インチ・リア16インチから始まり、現在スペシャルやCVOに備わるフロント19インチ・リア18インチまで進化してきました。バガーカスタムの流れを組むロードキングスペシャル(FLHRXS Road King® Special)ロードグライド(FLTRX Road Glide®︎)ロードグライドスペシャル(FLTRXS Road Glide® Special)にも見られる傾向で、大きなサイズはもちろんそのデザイン性も含めて“インパクトある足まわりで魅せる”バガーカスタムの特徴がもっとも色濃く出ているディテールと言えます。

ボディパーツの大きさもあって、スポーツスターやソフテイルよりもグラフィック面で遊べる余地が広いバガーカスタム。あらゆる意味でのデザインセンスで個性を生み出せる点からストリートグライドを見比べてみるのも面白いでしょう。

人気モデルの一角を担う存在として君臨

ツーリングファミリーに新しい風を吹かせたストリートグライド。115年以上のハーレーダビッドソンの歴史の中ではまだまだ新顔ながら、この13年のあいだに改良を重ね、より魅力あるモデルへと進化を遂げてきました。ウルトラリミテッドと並んで3モデルも揃うほどの人気を獲得したストリートグライドは、快適なツーリングはもちろんアメリカの薫り漂うカスタムカルチャーをも体現できる稀有なキャラクターを、これからも一層高めていくことでしょう。

Text:モーターサイクルジャーナリスト 青木 タカオ
画像提供:ハーレーダビッドソン ジャパン

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