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2021.03.11

ピース 綾部 祐二さんが対面した「TSUNAMIハーレー」。展示から9年経った今でも強烈な存在感を放つその ‘特別感’ を語る

2021.03.11

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2011年3月11日に起きた東日本大震災から10年を迎えるに当たり、現在はニューヨークを拠点に活動する綾部 祐二さんがアメリカの“3.11記念碑”を訪ねた。ハーレーダビッドソンミュージアムのTSUNAMIハーレー。日本から約6400㎞彼方のカナダに漂着後、ハーレーダビッドソンの博物館に展示された特別な1台に触れた綾部さんに、あの日を体験した日本人としてのリアルな思いを伝えてもらった。

アメリカ・ウィスコンシン州にあるハーレーダビッドソンミュージアムの前に立つ綾部祐二

そのナンバープレートに対して特別な気持ちが沸く

お笑い芸人の綾部 祐二さんが、「ハリウッドデビューを目指す」と公言してニューヨークに移り住んだのが2017年10月。綾部さんはまた大のハーレー好きでもあり、同年の初めには生まれ年が同じ1977年型XLCRカフェレーサーとともに、このFREEDOM MAGAZINEに登場していただいた縁がある。(その際の記事はこちらから)

憧れの国に住むことになったら、必ず訪れたい場所がいくつかあったそうだ。その一つが、ミルウォーキーのハーレーダビッドソン本社に併設されたハーレーダビッドソンミュージアム。 綾部さんが聖地と呼んだ博物館は、渡米翌年の2018年に拝観を済ませているという。ゆえにTSUNAMIハーレーと対面するのは、今回で二度目だ。

ハーレーダビッドソンミュージアムスタッフに館内を案内してもらう今回は特別に、ハーレーダビッドソン本社で働くティムさんとミュージアムスタッフのスティーブさんが館内を案内してくれた。

ミュージアムの歴史を教えてもらう綾部祐二

訪館が二度目の綾部さんにすれば、様々な展示の先に“それ”があることは承知の上だったが、他とくらべて際立つその唐突さには改めて驚いたという。

ミュージアムに展示されたツナミハーレーと呼ばれるナイトトレイン

「何百台とある歴史的な展示車両の中で、これだけが動いているんです。前回来たときに撮った写真と見くらべても、それは明らかでした」

日本の宮城県からカナダに漂着した津波ハーレーのタンク

サビてしまったハーレーの前車輪

2012年4月、カナダの太平洋岸沖群島に属するグレアム島に一棟のコンテナが漂着しているのを地元に住むピーター・マークさんが発見した。ドアが外れたコンテナの中にあったのは、潮に揉まれたと思しき1台のハーレーだった。発見者は関係各所に連絡し、カナダの日本領事館とハーレーダビッドソン カナダおよびハーレーダビッドソン ジャパン、さらには各メディアによる持ち主への呼びかけが始まった。手がかりになったのは、「宮城」と刻まれた日本のナンバープレートだった。

形の残ったままのバイクのナンバープレート

「展示から10年近く経つ間、世界中から来た大勢の人がTSUNAMIハーレーを目の当たりにしたはずですが、日本語が読める僕らは、そのナンバープレートに対して特別な気持ちが沸くと思うんですよね」

このハーレーだけが時とともに変化していく

やがて判明した持ち主は、宮城県の山元町に住むヨコヤマ イクオさんという男性だった。ハーレーは2008年に購入した『FXSTBナイトトレイン』。コンテナは愛車の保管場所にしていた。それがあの日の大津波に丸呑みされた後、翌春にカナダで発見された。事実を記せばそういうことになる。だが、関係した人々は疑念を抱いたに違いない。山元町とグレアム島は、太平洋を挟んだ直線距離で4000マイル/6400㎞も離れている。その間、広大な海に沈むこともなく、震災から1年かけて漂着するなんて奇跡が起こり得るのかと。

バイクが発見された当時の写真もミュージアムに飾られている発見された当時の写真も飾られている。

ツナミハーレーと同じ写真のFXSTBナイトトレインTsunamiハーレーと同じ車種で2000年モデルの『FXSTB ナイトトレイン』。

しかし、長い漂流を物語るかのような激しい損傷を晒す車体の中で、唯一ナンバープレートの「宮城」は驚くほど鮮明にその所在を訴えていた。そこでこう思うのだ。彼の地の者にはすぐに解読できない異国の文字には、奇跡が起きた事実を受け入れさせる力が宿っていたのではないかと。

潮で錆びてしまったバイクのハンドル部分

今でも錆が床に落ち続けているというハーレー

「動いている、というのは奇妙な表現かもしれませんね。すでに外装はボロボロで、おそらくエンジン内部もやられているから、二度と走ることはできないでしょう。でも、海水に浸り切って錆びついてしまったTSUNAMIハーレーは、今も変色が止まらず、錆を床に落とし続けているんです。ミュージアムという、貴重なバイクを保管するのに最高の環境を与えられている中で。要するに館内の展示物の中で、このハーレーだけが時とともに変化していくわけです。だからこれは、奇しくも動いている他にない気がして……。ミュージアムのスタッフも同じように表現していました。そしてこれは、ノータッチでここに置くのがベストなんだと言ったのです」

ハーレーダビッドソンミュージアムに展示されているハーレーを見つめるお笑い芸人ピースの綾部祐二時が経つとともに床に落ち続ける錆を見つめる綾部さん。
※撮影用に一時的にマスクを外しています。取材中はマスクを着用し実施しました。

いいヤツに出会えたことで悲しいバイクにならなかった

海を渡った「ナイトトレイン」がハーレー本社に届けられたのは、カナダで発見されてから約1カ月後。すでに判明していた持ち主に向けてハーレー本社は、無償で同じモデルを届けたいと申し出た。これを聞いた持ち主は丁重に断った。家族を地震で失くしたその男性は、周囲の人々も同じような悲劇に見舞われた中で、自分だけ特別な待遇を受けるわけにはいかないからと。ただ、こんなリクエストを送った。できれば自分のハーレーを預かってもらい、3.11を世界に伝えてもらえないかと。

そうして宮城で愛されたナイトトレインは、2012年10月からノータッチのまま、ミルウォーキーで展示されることになった。

特別な存在感を放つバイクハーレーダビッドソンミュージアムにとっても「特別な物だ」とスタッフのティムさんは語る。

「ミュージアム内は様々なエリアに分かれていて、どこを見てもハーレー好きには宝の山に感じられると思うのだけど、TSUNAMIハーレーの展示だけは異質。そこだけどこにも属さず、誰の目にも留まるような仕掛けをしているのかもしれません。前に訪れたときは、老若男女を問わず説明書きを読み込んでいました。この展示に向けた思いが感じられて、日本人として嬉しくなります」

ハーレーダビッドソン南大阪より送られた千羽鶴壁に飾られている千羽鶴はハーレーダビッドソン南大阪より贈呈されたもの。

「TSUNAMIハーレーに関して改めて思うのは、何かバカっぽい言い方に聞こえるかもしれないけれど、 “いいヤツが多いなぁ”って思うんです!そもそもカナダで発見した人が、これは一大事と思うかって話じゃないですか。僕は茨城の出身ですけれど、たとえば大洗海岸で読めない文字が書いてある何かを拾っても、たぶんそのまま放っちゃうと思うんです。なのにこの件はアメリカ、カナダ、日本でそれぞれ登場する人がみんな素敵で、素晴らしいストーリーを生み出した。本当に、特別な巡り合わせを感じますね。

震災は悲しい記憶ですが、このTSUNAMIハーレーはたくさんのいいヤツに出会えたことで悲しいバイクにならず、辛い思い出だけでないことを伝えてくれていると思いました。10年経ってすべてが過去のものになったわけではなく、今でもいろいろな思いを抱えながら過ごしてらっしゃる⽅々が⽇本にたくさんいる。そういったことを今回の取材を通し、遠く離れたアメリカで改めて気付かせてくれたTSUNAMIハーレーに感謝します」

ツナミハーレー第一発見者のカナダ人ピーターマークさんの言葉発見者のピーター・マークさんが発見時に思った言葉が壁に記載されてる。
“これは自分の家の裏庭にあった物かもしれないと思った。隣人が所有している何かかもしれないと思った。これは誰かの持ち物でした。全てを失ったかもしれない誰かのもの、もしかしたらその人の命さえも。” 

綾部さんがハーレーダビッドソンミュージアムを訪れた2月末は休館日だった。にもかかわらず厚意で取材をさせていただき、館内独り占めの見学が叶った。そこで次回は、綾部さんによる全館リポートをお届けする。気になる展示物から特別なお土産まで、再びの感動報告に期待してほしい。

ミュージアムに展示されたハーレーを見つめるニューヨーク在住のお笑い芸人ピース綾部祐二さん

Text:田村 十七男
Photos: Kosuke Matsuo
     ハーレーダビッドソン
取材協力:Harley Davidson Museum
URL: https://www.harley-davidson.com/us/en/museum.html

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