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暖かで神秘的な景色を求めて──。FXBBストリートボブと巡る千葉・房総半島ツーリング

2018.12.25

関東エリアへの取材なら、愛車の『ソフテイルデラックス(Softail® Deluxe)』で走ってゆく。すっかり冷えた風が吹くこの季節であってもそれは変わらず、他の移動手段にはない“自分で操っている楽しさ”がたまらなく好きなことと、冬には冬の走る楽しみがあるからだ。

特に、この季節特有の澄んだ空気や陽光を帯びた景色には、神秘的なものを感じさせる何かがある。

確かに冬のバイクツーリングは、ライダーに対して挑戦的な要素を数多く投げかけてくる。しっかりした装備で挑まないと後で大変な目に遭う。いざ走り出すまで、寒さに気持ちで負けてはいけない。

その先に広がる“神秘の世界”に出会えた感動が色褪せない思い出としてあるから、「またあの景色を見たい」と走り出すことができる。日の暮れも早くなり、求める画のなかにいられる時間は少なくなるばかり。でもきっと、今回も特別な景色や体験が私を待っているに違いない。

今回の相棒、『ストリートボブ(FXBB Street Bob®)』とともに走り出した新たな行き先は、房総半島。はるか遠くから差す陽光と穏やかな太平洋、そしてハーレーダビッドソンにふさわしい“画”を求めて、東京を飛び出した。

陽射しが心地よいフラワーラインを駆け抜ける

ひんやりした朝の空気を、低いエンジン音が切り裂いていく。

天気予報は数日前まで雨だった。でも、なんとかギリギリセーフ。思いが通じたのかもしれない。贅沢な時間になるであろうこの日を、楽しみにしていた。

今年は暖冬で、例年なら終わっているはずの紅葉がまだ残っている。でも、さすがに今週いっぱいが限界だろう。赤や黄に色づいた美しい葉が、やがて枯葉になろうとしている。秋と冬のちょうど間にある、このなんとも言えない渋い色合いが好きだ。

館山自動車道の終着点から房総半島を縦断し、南に向かおうと決めた。次第に澄んでいく空気と潮の香りが、私を非日常の世界へと誘う。垂れ込めていた灰色の雲から太陽が少しずつ顔を見せ始めた。そう来なくっちゃ!

一本道の小さな踏切はまるで時間が止まったように、待っても待っても電車が来ない。焦れて線路を覗き込んだ頃、思い出したように電車が横切っていった。

「キュールル、キュールルル」

漁港を横切るとカモメの物哀しい鳴き声が聞こえてきた。つい数時間前までは朝市の活気に満ちていたのかもしれない。

車と違って、バイクは孤独な乗り物だ。だからこそ、自分と向き合う特別な時間を与えてくれる。そのせいだろうか、バイクに乗っていると普段思いつかないような言葉や表現が次々に浮かぶ。

印象的なフレーズが思い浮かんでも、覚えていられるのはほんの束の間だ。移り変わる風景や風や匂いに触発されて、私の脳は果てしない連想ゲームを始めてしまう。そのうちに「あれ、さっき思い浮かんだあのフレーズは何だっけ?」と、大抵のことは忘れている。

「日本の道100選」にも選ばれた有名なドライブコース、房総フラワーライン。来年3月から4月にかけて、道の両脇を埋める黄色の絨毯はきっと鮮やかだろう。これから訪れる厳しい寒さに備えるように、菜の花のツボミたちが身を寄せ合っていた。

砂丘の手前を走ると、風で舞った砂がヘルメットにパチパチと音を立てて跳ねた。

12月とは思えないほど日差しは暖かく、潮の香りが鼻腔をくすぐる。右側には果てしない海が広がり、左側には、リゾート地を思わせるノスタルジックな別荘やペンションが立ち並んでいる。

まるでテキサスの牧場を彷彿させるエアストリームでランチタイム

フラワーライン沿いにひっそりと建つ「Lucky’s Trailer Village」は、アメリカから直接取り寄せたエアストリームを改造したレストラン。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に出てくる、時空を超える乗り物のようで冒険心をくすぐられる。お店の前に停めたストリートボブも、アメリカンな風景にすっかり溶け込んでいる。その表情はどこか嬉しそうだ。

カントリーミュージックが流れる店内は、懐かしさを感じさせる空間だった。数種類から選べるランチプレートは、アメリカンフードにこだわったラインナップが魅力。香ばしいバターが香る魚のムニエルとタルタルソースに、滑らかなマッシュポテトの相性が最高! シャキシャキとした食感のサラダとさっぱりしたドレッシングもすごく美味しい。

穏やかな日差しが差し込むカウンターは、夜になれば雰囲気たっぷりのバーに変身しそう。砂丘から吹き付ける強風でトレーラーが微かに揺れた。好きなときに好きな場所に行けるキャンピングカー暮らしには、昔から憧れていた。自分だけの、こんな隠れ家があったら楽しいだろうなぁ……。ハーレーとともに暮らしている姿を想像するだけで、嬉しさが込み上げてくるよう。

仕事で訪れたドイツやポルトガルの高速道路には、自転車やボートを積んだキャンピングカーがたくさん走っていた。春休みや夏休みを利用して、大陸を横断しながら過ごすファミリーも多い。満天の星空の下で家族や仲間と語りながら飲む熱いコーヒーは、きっと美味しいに違いない。なんて贅沢な旅だろう!

空想を広げていると、時間があっというまに過ぎていく。12月の太陽は沈むのが早い。気持ちを奮い立たせるように席を立った。

陽の光がきらめく太平洋の向こうに想いを馳せる

プライベートビーチのようなスポットを見つけた。エンジンを止めて、しばし海風に身を委ねる。雲と青空がせめぎ合い、海は淡々とその色を水面に映していた。潮の満ち引きによって独特の形に削られた岩に腰を下ろす。タイミングよく、太陽が今日一番の日差しを投げかけてきた。

女子サッカーの取材で、いろいろな国を訪れた。アメリカ、カナダ、パプアニューギニア、ヨルダン、ポルトガル、スペイン、フランス、インドネシア。それらのすべての国が、目の前にある海と空でつながっていると思うと不思議な感じがする。

いろいろな“道”があったけれど、道端の風景には、その土地の文化や生活感がよく表れていた。そして、どの国でも一番苦労したのが車の運転だった。海を渡れば日本の常識は通用しない。それに、ほとんどの国は日本と逆で右車線、左ハンドル、マニュアル車がスタンダード。女性が運転しているというだけで好奇の目を集めてしまう土地もあった。そんななかで、拙い英語と慣れない交通規則と戦いながらレンタカーを走らせるのは、やっぱり不安だらけだった。

だから、ときどきバイクとすれ違うと、仲間を見つけたような安堵を覚えた。
ハーレーは世界中の道路で走っていた。そして、どの土地の風景にも馴染んでいた。

夏、フランス・ブルターニュ地方の小さな町を早朝に散歩していたら、タンクトップを着たマッチョなおじさんが『ロードキング(Road King®)』を洗車しているところに出くわした。ピカピカに磨き上げられ、精緻な絵が施されたボルドーのフューエルタンクが印象的な一台。近くで見たくて、「素敵なバイクですね」と、少し勇気を出して声をかけた。怪しまれないように「私も日本でハーレーに乗っているんです」と、自分の愛車をスマホで見せながら。

すると彼は、同じ趣味を持つ異国の友だちを見つけたからか少年のように喜び、愛車へのこだわりを語り始めた。コーヒーもお酒もないのに、何時間でも語れそうな熱量だった。そして、別れ際に「またどこかで!」と、握手を交わした。

年齢や国籍を超えて共有できる楽しみを持っていることは幸せだ。ハーレーダビッドソンに乗っていると、ささやかだが、そんなかけがえのない思い出を与えてもらえることがある。

「まったく、いつまで待たせるんだか」

まだエンジンにぬくもりが残るストリートボブが、早くエンジンを吹かせてくれとせがんでいるように見えた。

「お待たせ」。心の中でそう声をかけ、ハンドルにかけたヘルメットを手に取った。

風が冷たさを増してきた。雲の切れ目から、筋になった神秘的な光が穏やかな海に差し込んでいる。

数少ない“チョッパーの伝統”を受け継ぐストリートボブ

バイクに求めるものは人それぞれだ。躍動感や“やんちゃさ”を求める人もいれば、流麗なシルエットや“音”に徹底的にこだわる人もいる。私の場合は、何といっても「自分の体との一体感」。疲れずに長く乗れるのが一番だ。

1968年公開の伝説の映画「イージー・ライダー」の世界観に触れたときには、キャプテン・アメリカのチョッパースタイルに憧れた。「もっと自由でいいんだ」と、人生やオートバイに対する既成概念を良い意味で覆された心地よさが、ハーレーダビッドソンへのイメージを作りあげた。

ストリートボブには、そんなチョッパースタイルのDNAを感じる。高く持ち上がったエイプハンガーハンドルや、なんとも滑らかなボディラインが今時のオートバイとは思えない色気を醸し出している。それでいて、ポジションも楽だし足つきもいい。この身軽さと安定感は、クルーザースタイルに勝るとも劣らない魅力がある。

今回の旅が終わったら、次はどこに行こう?
気づくと、また連想ゲームを始めている。

宮崎の日南フェニックスロード、石川の千里浜なぎさドライブウェイ、北海道の知床横断道路……。行ってみたいところはたくさんある。ストリートボブはきっと、どの風景にだって映えるはずだ。

海を眺めながらビンテージカップでカフェを楽しむ

太陽が一気に傾き、夜の気配が近づいてくる。

夕焼けの空が、海との境目にグラデーションを作り出していた。漆黒の闇が訪れるまでに、何十種類の色が空と海のあいだを埋めるのだろう。

「ザッバーン」

すぐ近くで、海が吼えた。波が岩にぶつかって白い飛沫を上げている。潮が満ちてきたのだろう。海沿いの道に別れを告げ、昔ながらの家々が立ち並ぶ小径に進路を変えた。

千倉の海が見えるカフェ「ストロベリーポット」で、今日最後のひと時を過ごす。小さな看板を頼りに、隠れ家のような入り口の階段を上っていくと、夕焼けに染まった海が目の前に広がった。

クリスマスソングが流れる店内では、大きな壁掛け時計がカ、チ、カ、チ、と丁寧に時を刻んでいた。「13年目を迎えたんですよ」と千倉出身の女性オーナーが言った。ふと開いた雑誌のなかで、海女さんの格好をしたオーナーが微笑んでいる。「夏場は海に出ているんですよ」。包容力のある笑顔だった。

店内には、世界中に収集家がいるアメリカ製の耐熱ガラス容器「ファイヤーキング」がディスプレイされている。時代を感じさせる昔のマクドナルドのロゴ入りカップ、聞けばこうした有名ブランド入りのファイヤーキングはレアアイテムなのだそう。ハーレーダビッドソンのカップもあるといいなぁ……。

夢中で見ていると、注文したコーヒーとガトーショコラが出てきた。時間をかけて温められたカップに注がれたコーヒーから、香ばしい匂いが立ち上る。顔を近づけると、運転で緊張していた体から少しずつ力が抜けていくのがわかった。

オープンデッキに出ると、すでに日は暮れていた。ランタンの柔らかい灯りが、心を穏やかにしてくれる。

指先まで温まったところで、再びグローブをつけた。
さぁ、今日1日を締めくくるナイトランへ向かおう。

夕暮れに染まる房総の海が旅の終わりを告げる

海に別れを告げて再びハンドルを握ると、高速道路を東京のネオンに向かって走り出した。

女子サッカーの試合や選手を取材して、原稿を書くために15時間パソコンの前に座りっぱなしだったこともある。海外に行けば言葉も生活環境もまるで違うし、常に気を張り詰めていなければいけない。やりたかった仕事ができて毎日が充実しているから、ストレスを感じることは少ないけど、忙しくなると自然と視野が狭くなってしまう。

自分の体に無理を強いていないか?
大事なことを見落としていないか?

頭と心をリセットするために自分と向き合う時間はやっぱり必要だな、と思う。ハーレーと過ごす時間は、そのことに気づかせてくれる。

私のバイクライフは今年で20年目を迎えた。高校時代に乗り始めたバイクはいつしか、移動のためのツールを超えて私を支える存在になった。夏は汗だくになるし、冬は凍えるように寒い。それでも私は走り続ける。

私にとってハーレーダビッドソンとは、ありのままの自分を思い出させてくれる相棒だ。

春になったら、また今日の道を走ろう。
空気の肌触り、風の音、雨の匂い。
今日走った道も、次に来たときはきっと違う印象になるはずだ。

取材協力:
Lucky’s Trailer Village
千葉県館山市洲宮1820-2
TEL:0470-37-9017
営業時間:ランチタイム 11:00〜14:30(不定休)
ディナータイム 19:00〜21:30(完全予約制)

ストロベリーポット
千葉県南房総市千倉町忽戸549-1
TEL:0470-37-9017
営業時間:11:00~18:00
定休日:火曜

ヘルメット:クラシックレッドレトロタンク3/4ヘルメット(レッド)

松原 渓
東京都出身。なでしこジャパンやなでしこリーグを中心に、女子サッカーの最前線で常に取材をしているスポーツジャーナリスト。小学生の頃からサッカークラブでプレーした経験と国内外での取材をもとに、多くの記事を執筆。監督や選手たちからの信頼も厚い。愛車は2015年式のハーレーダビッドソン ソフテイルデラックス。
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Photos:安井 宏充

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