友人が一緒で、被写体の他にもオートバイやクルマがあるのなら、そのヘッドライトを当てるのも面白い。つまりストロボがなくても、光を当てられるものならなんでも利用すればいい。
柴田さんは懐中電灯だって立派な光源になるといい、【9】と【10】を撮った。この状況では背景に光るものがあって綺麗で面白かったが、車体の左側(カメラ側)にはさほど光が回らなかった。そこで用いたのが懐中電灯で、車体の後ろ側から暗くなった燃料タンクやエンジン、サドルシートなどに光を当てている。
車体の後ろだけに光を足した理由は、ヘッドライトのリングが街の灯りを受けてドラマティックに光るのを妨げないためだ。
【11】レンズ:200mm 絞り f4・シャッタースピード:1/4 秒 ASA感度:800 ホワイトバランス:電球
背景となるイルミネーションの光は、車体に近づければボケ味がなくなってしまうし、遠ざけすぎると小さくなってしまう。柴田さんは程良い距離を吟味し、ソフテイル スリムSを置いた。【11】の写真だ。
「この場合、望遠レンズを使って絞りを開放にします。そしていちばん撮りたい場所をクローズアップしたのです」
我々人間の目は常に眼球が動いて、見たい場所にピントを合わせ続けているため、視野全体にピントが合っているような感覚でボケてみえることはない。つまり、背景や前景をボカして写すというのは、写真や動画特有の表現ということになる。
ボケ味はレンズの焦点距離や絞り値、撮影距離によって違ってくるので、柴田さんはこういった要素を巧みにコントロールした。
他にもタンクコンソールに配置されるメーターも、イルミネーションの光を写し込ませるなどして撮影した。光は被写体のためのものだけでなく、被写体そのものにもなるのだ。
「いつも思うのですが、ハーレーダビッドソンのメーターは書体も手の込んだ色気のあるものが使われていて、まるで高級時計のようですよね。ライディング中も絶えずライダーの視野に入るものですから、こういった質感の高いディテールはオーナーのお気に入りのポイントとなるのでしょう」
柴田さんはファインダー越しにそう言った。往年のFLモデルを彷彿させるキャッツアイコンソールには、時計がときを刻むようにハザードランプが等間隔で点滅を続けている。
フォトグラファー:柴田 直行さん
1963年生まれ、横浜市在住。写真専門学校在学中からバイク専門誌で写真を撮る仕事をスタート。1980年代から30年間に渡ってアメリカ国内のモトクロスやレースシーンを中心に撮影。現在は日本国内でカスタムからツーリングまでバイクライフ全般をカバー。日本レース写真家協会会員。
使用したカメラ
カメラ:Nikon D5
レンズ:AF-S NIKKOR 70-200mm f2.8G ED VR II
AF-S NIKKOR 17-35mm f2.8D IF-ED
三脚:Velbon sherpa G430
Text:モーターサイクル ジャーナリスト 青木 タカオ
【撮影講座-第1回】バイクをプロのようにカッコ良く撮影する6つのポイント!
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