HARLEY-DAVIDSON
HARLEY-DAVIDSONとのコラボデザイン・プロジェクト「SEEK for FREEDOM」アイアン1200がついに完成!
(GraphersRockインタビュー・後編)

ハーレーダビッドソンの人気モデル『アイアン1200(XL1200NS Iron 1200™)』をまったく新しい姿へと生まれ変わらせるコラボレーションデザイン・プロジェクト「SEEK for FREEDOM」。グラフィックデザイナー「GraphersRock(グラファーズロック)」こと岩屋 民穂が挑んだデザインを纏ったマシンがついに完成、我々の前にその姿を現した。

GraphersRockの世界観に触れたインタビュー前編に続き、後編となる今回はついに完成したコラボバイクのディテールを深掘りするとともに、制作を通して感じた発見や驚き、作品に込めたメッセージなどに迫った。

有機的かつ無機的。トータルで完成された都会的なバイク

── ハーレーとのコラボバイクを制作するにあたり、デザインのテーマとして意識されたのはどのような部分ですか?

バイクの魅力はエンジンの力を直接感じられるところだと考え、「力というものをどうやってビジュアル化するか」を意識しました。動物で例えると豹のような強い印象。そこから動物的かつ有機的なイメージを側面に施し、一方で上から見たときにはテクノジー的で無機的なイメージを感じさせるデザインにしよう、と。全体として、有機的なものと無機的なものが上手く交わるデザインのバランスを考えました。

── 蛍光イエローというビビッドな色を使うことは早い段階から決めていましたか?

今回はショーバイク的な側面もあり、目立った方が良いと考えていたので、蛍光イエローは最初から使おうと思っていました。今回実制作を担当したペイントファクトリーのGlanz(グランツ)から聞いたのですが、蛍光イエローの塗料は太陽光ですぐ色が抜けてしまうことなどもあり、一般的に車やバイクではあまり使わない色だそうです。そういう意味でも、こういったコンセプトモデルならではのカラーリングになりました。

── タンクやフェンダー、サイドカバーといった蛍光イエローで塗装した部分には、文字やドット柄などがかなり細かく入っていますね。

乗り物に直接的な絵が入るのは、デコトラやアメリカ軍の戦闘機などでもあります。ただし、今回に関しては直接的に絵を入れるのではなく、エッセンス的に抽象画をデジタライズして柄っぽく入れました。細かい柄やドットは特殊なデカールで再現しているんですが、タンクの傾斜にかかるドット柄はワンシートで貼ることが難しい場所で、グランツの職人が1点ずつすべて手作業で貼ってくれています。

── 手作業とは思えない精密さです。このビビッド感は、ハーレーの文脈的には新鮮に感じますが、結果的にとても映えますね。

ハーレーの文脈やマナーからは出てこない配色にうまく仕上がったと思います。ハーレー側からも「既成概念にとらわれず新しいものを」という要望があったので、すべてが綺麗にハマりました。

── ラッピングなどではなく、塗装で仕上げているのはまさに職人技ですね。

DTP(デスクトップパブリッシング / 卓上出版の意)上で機械的に制作されたデザインが、職人の手作業によってバイクに宿っていく様は、何にも変えがたいような感覚です。

── デザインし過ぎていない、都会的で洗練された印象を受けました。

僕は自転車に傾倒していた時期があって、そのときの自転車を組むときの感覚が生きているのかもしれません。自分で自転車を組み始めた頃、カッコいいパーツがあればとりあえずそれを付けていたのですが、そうするとパーツ単体ではカッコよくても、全体で見ると「何か違うな」となることが多く。そのバランス感覚は、今回のコラボバイクを制作する際にも生かされていると思います。

制約を乗り越え、アイアン1200に宿った“工芸的な美しさ”

── 制作過程において、新たな発見や感じたことなどはありましたか?

キックオフミーティングでグランツにデザインを渡したとき、正直なところ「この通りにはいかないだろう」と思っていました。現場判断で「これはできない」という部分が出てくるだろうな、と。しかし、細かな調整はもちろんありましたが、「これはできないのでナシにしましょう」ということが一切なかった。グランツができないと一言も口にしなかったのがありがたかったですし、こちらの意図を汲んでチャレンジしてくれたのが何より嬉しかったです。

── 今回の制作に関しては、GraphersRockさんのイメージをそのまま具現化したという、一見単純に思えることが、もしかしたら一番の驚きなのかもしれません。

はい。僕自身は平面上でデザインしていたので、立体になったときの湾曲や歪みについてある程度はイメージしていましたが、勘に頼った部分も大きかったんです。そういった部分に関しても、グランツが最終的に上手く調整してくれました。

── デジタルとアナログ、双方の強みが上手く交わって誕生した作品ですね。

そうですね。データを作って印刷機に送り、オートマティックに出てくるという工程では味わえない感動がありました。自分がデザインしたものを、職人の方々が手作業によって“工芸的な美しさ”を付加して具現化してくれました。

先ほど完成したバイクを初めて見たとき、工業製品を見ているというよりは、どこか漆器やガラス細工を見ているような感覚に近かったです。

── あとは、バイクのルールにいい意味でとらわれていないように感じました。

デザインするにあたって、意識的に今のトレンドはほとんどチェックしなかったですし、ハーレーダビッドソン ジャパンとしても「今までに見たことのないものを作りたい」という想いが強かったのが大きいですね。色の組み合わせ一つとっても、バイクカルチャーの中からは生まれ難い組み合わせでしょうし、それが良い方向に作用しました。まさに今回のようなコンセプトモデルだからこそできたデザインだと思います。

── ハーレーダビッドソン ジャパンから与えられたデザインの自由度も高かったんですね。

本当に自由にやらせてもらえたので、そこは懐の深さを感じました。

── 一方で、クルマと違って車体が小さいバイクの特性上、デザインをする部分が限られていることへのフラストレーションはありませんでしたか?

もっとたくさんデザインできる部分があればそれはそれで面白いとは思いますが、“制約のある中でベストを尽くす”というのがデザイナーの仕事だと思っているので、今回はバイク、ハーレーダビッドソン、アイアン1200というモチーフの中で可能なアイデアを、最大限に発揮することはできました。

── GraphersRockさんも今日初めて完成車を見たということですが、実際に現物を見ると、やはり迫力が違いますね。

頭の中でイメージしていたものが目の前に現れたときの感動は特別ですね。バイクは初めての制作物ですし、意図していたことが“宿った”感じがして良かったです。

自由なアイデアの先に生まれた、“得体の知れないもの”

── このコラボバイクは、これまでバイクに興味が無かった人にも響く魅力があると思います。同時に、GraphersRockさんも今回のプロジェクトを通して、バイクの奥深さのようなものを感じたのではないでしょうか。

自分だけのバイクを作る楽しみを感じました。僕がバイクの世界をあまり知らないからこそできた部分も大きいですし、こういうカスタムデザインは、“やらない”というよりは“やれない”と思っている人が多いからなのかな、と思いました。実際、技術的には難しいので一般の方にはハードルが高いのかもしれませんが、グランツのようにそれを受け入れて具現化してくれる方々もいるので、バイクのカスタムの可能性はもっとあるのかな、と感じています。

── バイクのデザインという面では、これまでGraphersRockさんの手掛けてきたプロダクトとはどれも違う難しさや、やりがいがあったと思います。

印刷では成し得ない、人の手の入ったプロダクトのオーラ、手作業だからこその“揺れ感”のようなものを、今回はすごく感じました。今はデジタルでデータ制作から印刷までできる時代なので、正直これまではそういったアナログ的な感覚はあまり意識したことが無かったです。

ただし、1990年代のDTP以前の手作業で版下を作っている時代のデザインなどを見ていると、どことなく人の手が入っている雰囲気があるんですよ。デジタルカメラで撮った写真と、フィルムカメラで撮った写真はどこか味わいが違いますよね。そういう雰囲気や味わいが、このコラボバイクにはあるように感じます。

── 自由な発想でアイアン1200を生まれ変わらせたという点で、玄人の人も新鮮な印象を受けると思います。同時にモノとして残るという点では、これまでのハーレーダビッドソンのコラボレーションとはまた違った形で広がりが生まれてくるでしょうね。

そう思ってもらえたら嬉しいですし、ぜひいろいろな方に実車を見てほしいです。また、このコラボレーションバイクは今後様々な形で活用する予定ですが、目にしたときに「これは何なんだろう」と興味を持ってもらえるものを作ろうという意識はありました。結果、10年20年経ったとして「これはいつの時代のバイクだろう」と思わせるような、時代性のわからない“得体の知れないもの”を作れたらと思いました。

「SEEK for FREEDOM」
HARLEY-DAVIDSON® × GraphersRock 
- Exhibition –

完成したアイアン1200のお披露目の場として、2019年4月24日(水)に東京・渋谷の THE CORNER にて、一夜限りのExhibitionイベントの開催が決定! バイク展示のほか、GraphersRockとゆかりのあるtofubeats、長谷川白紙によるパフォーマンス、そして監督・映像ディレクターの吉﨑響をゲストに招いたトークショーなどを予定している。さらに来場者には、GraphersRockがデザインしたTシャツ、ZINE、ステッカーがパッケージングされたノベルティ(先着)のプレゼントも。ぜひ足を運んで、世界に1台のアイアン1200を目撃してほしい。

イベントの詳細はこちら

Text:ラスカル(NaNo.works)
Photos:Masato Yokoyama

BIKE LINEUP

カスタムカルチャー全盛期の’70年代アメリカが生んだ
伝統のチョッパーとカフェスタイルが融合したモデル

iron1200

Iron 1200™

ダークカスタムというコンセプトに基づいた真っ黒なボディをベースにビビッドなレインボーが際立つモダンストリートバイク、アイアン1200™。伝統のカスタムスタイル「チョッパー」に人気の「カフェレーサー」テイストが融合するという長い歴史のなかで独自のカルチャーを育んできたハーレーダビッドソンにしか生み出せない“温故知新”だ。

今はまさに「カスタム戦国時代」。世界が注目する日本のカスタムシーンからさまざまなハーレーダビッドソンが輩出され、今また新しいスタイルを求める人が増えている。その潮流から見ると、アイアン1200™はそんな新時代の自由を定義づけるのにふさわしい。

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