Harley-Davidson

Freedom Interview

2020.11.27

2つのギネス記録をもつ日本のEV界の第一人者、舘内 端さんに聞く!これからのEV時代とハーレー初の電動スポーツバイク「ライブワイヤー」の魅力

2020.11.27

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ハーレーダビッドソン初の電動スポーツバイク、『ライブワイヤー (LiveWire®️)』の、日本での発売が少しずつ迫ってきた。それに先駆けてEV(=Electric Vehicle)というものを学んでおこう、というシリーズ企画の第2弾をお届けする。

ハーレーダビッドソン史上初の電動スポーツバイクライブワイヤー、日本での発売迫る

今回は、おそらく日本で最初に「いずれEVの時代が来る」と声を大にして提唱した自動車界の重鎮に御登場いただく。

レーシングカーのエンジニアとしてF1マシンにまで関わり、後に自動車評論家へ転身して著書も多数。1994年には日本EVクラブを設立して代表を務め、電気自動車にまつわる様々な活動を通じてEVの楽しさや環境負荷の小さな自動車の重要性を広く伝え続けてきた、舘内 端(たてうち ただし)さんだ。

日本EVクラブの代表を務める舘内端さんにEVについて語ってもらった

舘内さんは1994年にフォーミュラマシンをEVに改造した「電友1号」というレーシングカーを自費製作し、当時アメリカのフェニックスで開催されていたEVレースに参戦。村松 康生選手のドライブで3位入賞というところから御自身の活動をスタート。その後、ダイハツの軽自動車をEVにコンバートして途中充電で555.6km走行してギネス記録を打ち立てたり、クローズドコースを一定のスピードで走って途中充電で1000.3kmを走って再びギネス記録をマークするなど、数々の功績を残してきた日本のEV界のまさしくレジェンドである。

舘内端さんが初めて開発したEV電友1号、EVレーシングカー舘内さんが最初に開発したEV「電友1号」

EVに乗って初めてギネス記録を獲得、555.6kmの距離を途中充電で走ったギネスを記録したダイハツミラEVで大阪に到着した際の写真

今回は舘内さんにEVという乗り物が持つ可能性、そして数値と写真から読み解くハーレーのライブワイヤーについて、エンジニアリング的な視点から語っていただいた。

エンジン車よりシンプルな構造。今後ますます広がるEVの可能性

──そもそもの初歩的なことですが、EVってどのように動くんですか?

例えば、扇風機を思い浮かべてみてください。その羽根の代わりにタイヤを付けたようなもの、といえばいいかな。スイッチを入れるとコンセントから電気が流れて、電気が流れるとモーターに取り付けられた羽根が回る。

EVの場合にはバッテリーから電気が流れ、モーターに取り付けられたタイヤが回る。それに電気をいっぱい流したり少なく流したりを調整するコントローラーという装置、アクセルなどのコントローラーに信号を送る装置、というのが基本的なメカニズムの構成要素。あとはバッテリーを充電するための装置があればOKです。エンジンを積んだ自動車やバイクに較べると、かなりシンプルなんですよ。

バッテリーをたくさん積めば、力も出せるし、力を出せる時間も長くなる。EVと聞いてすぐに航続距離を気にする人もいるんですけど、単純に考えると、バッテリーをたくさん積めば解決しちゃう問題なんです。

僕達は1回の充電でどれくらいの距離を走れるかというチャレンジをするために、ダイハツ・ミラに75kWhという当時としてはかなり大きな電力量のバッテリーを積んで、ふたつのギネス記録を手にしたわけですけど、それは「やればできるよ」というEVのひとつの可能性を示したかったからやったんです。

EVの第一人者である舘内さんがEVの魅力を語るEVの可能性に魅せられた時の思いを語る舘内氏。

バッテリーの技術も今ではどんどん進んできていて、これからもっと小さくて長持ちするようになっていくから、EVのネガティブな要素といわれてきた部分もどんどん払拭されていきます。そういうバッテリーが技術的にはできあがっていて、あとはどのタイミングで世に出るか、というところに来ています。もっと小型で長持ちするバッテリーが登場したら、それは電動バイクにも最適。普及につながっていくでしょう。EVの可能性は、まだまだどんどん広がって行くんですよ。

EVとエンジン車は構造も世界観も根本的に異なるもの

もっと簡単な話、バッテリーに合わせて、航続距離に合わせて、僕達が生活を変えることでも問題は解決しちゃうんですけどね。例えばエンジン車では一気に500km先の目的地まで走っていくような旅をしてたけど、EVでは同じ距離を2度か3度の充電をしながら走っていく。充電してる間は、充電のために立ち寄ることになったその土地を散策するとか、その土地の美味しいモノを食べるとか、そういうスロウなスタイルの旅を楽しむような、ちょっとした発想の転換。そうしようとする意識があれば、いかなる航続距離でも問題なし、でしょ。なにも航続距離が長い=偉い、というわけじゃないんですよ。

EVとエンジン車は、そもそも全く違うもの。エンジン車の延長にEVがあるっていうわけじゃないんです。エンジン車と比べて航続距離がどうだとか、パワーや重さがどうだとか、論じるべきじゃない。走らせる目的だとか楽しみに重なる部分はあるけど、構造も世界観も根本的に異なるもの。例えていうなら、トランプと花札みたいなもの(笑)。そういう考え方ができると、EVの存在がまた違って見えてくると思いますよ。

これからやってくるEVの時代、ハーレーの対応は素早かった

──舘内さんの考えるEVの楽しさって、どういうところにありますか?

僕はEVだけが楽しいと主張してるわけでも思ってるわけでもないんです。エンジン車にはエンジン車の楽しさ、気持ち良さがある。例えばサウンドだとか振動だとか、パワーやトルクの山だとか谷だとか、あるいはギアシフトだとか。それはEVにはないものでしょう? だけどEVにはEVの楽しさ、気持ちよさがある。例えば静かさや滑らかさ、いきなりトルクが立ち上がる瞬発力だとかそのときの力強さだとか。それはエンジン車にはないものでしょう? 繰り返しになるけど、全く違う乗り物なんですよ。

EV界のレジェンドが語るEVの可能性や楽しみ方

でも、いずれEVの時代というのは必ずやってくる。すぐに100パーセント禁止になるかどうかはともかくとして、将来的にエンジン車が走れなくなる時代になる可能性はものすごく高い。もうすでに世界中の大都市でエンジン車が入れないエリア、EVじゃないと走れないエリアができてるし、エンジンを積んだ自動車の将来的な販売禁止を表明している国も、いくつもある。そういう流れになってるんですね。ならば自分達も変わらなきゃ、と早いタイミングでアクションを起こしたハーレーの姿勢は称賛するべきでしょうね。

バイクの場合は、いくらEVはメカニズム的にシンプルでレイアウトの自由度も高いといっても、タイヤはふたつしかないし、フロアがあるわけでもないし、どこかひとつバランスを間違えたら全体に影響しちゃうから、クルマと較べたら作るのは遙かに難しい。とてもじゃないけど、1年や2年でパッと完成するようなものじゃありません。これまで鼓動とか振動とかが大きな魅力だったハーレーが、ずいぶん早い段階から電動化の準備を進めてきて、新しい時代のハーレーというものの楽しさ、気持ち良さ、ユーザーのメリットという、様々な可能性を追求してきたはずですからね。素晴らしいですよ。

ライブワイヤーはかなりよく考えて作られている

──まだ日本仕様についての詳細は発表されてないので、あくまでも海外仕様ですが、写真とデータを御覧になって、このライブワイヤーがどんなマシンなのか予想していただけますか?

バイクの場合、特に難しいのは重心の高さ、それと前後の重量配分。モーターはエンジンほど重くないんですけど、ところが重量物のバッテリーがある。それをどこにどう積むかで、バイクとしての基本特性がガラッと変わっちゃうんです。高速での直進安定性を稼ごうとするなら、実は重心はなるべく高いほうがいい。けれどあまり上を重くしすぎると、曲がりにくいバイクになる。その加減がとても難しいと思うんです。

元レーシングエンジニアから見るハーレーダビッドソンのライブワイヤーの技術

ハーレーはモーターを下に置いて設計していて、おそらくバッテリーはその上に積んでるんでしょうね。細長いモーターを一番下に置いて、途中で回転の方向を変えて二段減速して、その回転をベルトで後輪に伝えているのかな? EVのバイクは静かだから、チェーンだと音がうるさくなっちゃうでしょ。だからベルト。ハーレーがベルトにこだわってきたのが、ここで活きてますね。

日本でも発売が決定したハーレーダビッドソン電動スポーツバイクライブワイヤーブラック

モーターは、径を小さくしてパワーは長さで稼ごうとしてる感じ。径が小さいとトルクは稼ぎにくくなるんだけど、レスポンスがいいんですよ。バイクとしてどういうモーター特性を持たせればいいのか。径が小さくて長い高回転型にするのか、短くて径の大きい低速トルク型にするのか。結論としては高速回転型で、レスポンスを高めましょうと。多少トルクは落ちても、2段減速にすることで車輪あたりのトルクは稼げるだろうと。相当考えたな、と思います。ただ、二輪で化け物みたいにトルクばかり大きいと危ないし、回生も強く効かせちゃうと危ない。そこの制御は難しそうですね。

何しろ0kmから100kmまでの加速は3秒でしょ? ものすごい速さですよ。けれど、ちゃんとコントローラーでウイリーしすぎたりホイールスピンしすぎたりしないように制御を入れてるみたい。大トルクのバイクをずっと作ってきたハーレーだから、その辺りは抜かりないですね。スポーツモードとかロードモードとかレインモードとか、走行モードもいくつかある。これはエンジン車では難しくて、モーターだからこそやりやすい。EVのメリットを活かしてますね。

ハーレーダビッドソンライブワイヤー走行シーン

全長やホイールベースの長さからすると、モーターはかなりコンパクトに見えます。モーターが小さくて重量がそれほど重くなければ、バッテリーを配置する場所が色々工夫できますね。

重量はハーレーのエンジン車と同じくらいか、それより軽いくらい? それはすごい。EVでは絶対に重くなるので、かなりよく考えて基本設計をしたことが解りますよ。リアサスペンションのアームの角度の付け方も、フロントフォークの角度の立ち方も、運動性能と直進安定性のバランスを相当考えての設計になってることがうかがえます。

ライブワイヤーが高速を駆け抜ける、0km-100kmまで3秒での加速が可能

まぁ、あくまでも見た限りでの予想ですけどね。実車がどうなってるのか、とっても興味深いですね。

EVのレジェンドが今後ハーレーに期待すること

実はハーレーにはツアラータイプのEVバイクも作って欲しいな、と思ってるんです。EVってバッテリーの電気を使って走るだけじゃなくて、給電もできるんですよ。エンジンのバイクだと不可能な、電気供給バイクにもなる。トランクボックスに色々忍ばせていけば、コーヒーも湧かせるし御飯も炊ける。灯りだって点けられる。キャンプの楽しさが広がるでしょ?

それにもちろん路面の状況には左右されるけど、災害時にクルマでは行けない場所にも入っていける可能性があって、少なくとも行った出先の被災地に灯りくらいは点けられるでしょ。クルマよりは小回りが効いて機動力があるわけだから、バッテリーの容量が少なくなったらパッと充電しにも行きやすい。そうなるとバイクというものの概念が変わるし、見方も違ってきますよね。

EVバイクって、乗って楽しい、気持ちいいだけじゃなくて、本当にいろいろな可能性があるんですよ。

EVにはEVの楽しさ、気持ちよさというものをぜひ体験してほしい

──最後に読者の皆さんに何かメッセージをいただけませんか?

1994年に電友1号と一緒にフェニックスのサーキットに行ったら、高校生が自分達で改造したEVを持ってきてレースをやってたんです。アメリカの高校生がやってるんだから日本でもできるだろう、そういう仲間ができていかないとEVは広がらないだろう。そこで友人や知人達と日本EVクラブを作って、手作りEV教室を開催したり、サーキットを使ってイベントを開催したり、とにかく多くの人にEVの面白さを伝えたいと思ってやってきました。

世界自動車図鑑、部屋

その根底にあるのは、環境問題っていうのは他人事じゃないんだよ、っていうこと。自分達が起こしたことで、自分達が直面してる問題。つまり責任の一端は自分達にもあるわけなんです。だから自分達から変わっていこう、やれることを自分達でやろう、と。例えばゴミを出さないようにしよう、フードロスにならないようにしよう、というようなことの自動車版みたいなものですね。でも、それだけじゃなくて、EVにはEVの楽しさ、気持ちよさがあるわけだから、それをできる限り多くの人に体験して欲しい、と思ってるんです。

ただ、初めてのコト、モノというのは、緊張するものなんですよ。だからEVをよく知ってる人に教わりながら体験してみるといいかもしれません。そうすると楽しさの幅みたいなものも解りやすいですからね。これまでEVクラブで試乗会をいっぱい開いてきたんですけど、皆さん、やっぱり最初は緊張してる。で、乗り込んでみると、こういうんです。エンジンはかかってるんですか? いや、エンジン、ないですから(笑)。スタート前にはそんな様子でも、経験者が一緒に乗って1周して帰ってくると、もうニコニコしちゃって楽しそうなんです。

日本EVクラブ取材のEVフェスティバルの様子、手作りEVなどが紹介される、電気自動車日本EVクラブ主催のEVフェスティバルの様子。シンポジウムや最新EV車の試乗会、会員による手作りEV紹介などEVに関する様々なことが体験できる。

EVにはそういう力があるんですね。いくつかある壁をどう越えるかだけの問題なんです。そして自分が経験して当たり前に乗れるようになったら、次は誰かに教えてあげてください。そういう連鎖が増えていくと、EVは普通の人が普通に乗れるものになっていくんです。それはきっと、バイクでも同じだと思うんですよ。

Text:嶋田 智之
Photos:まるや ゆういち
一般社団法人 日本EVクラブ
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