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新型エンジンを通して見る、ハーレーダビッドソンの伝統とクラフトマンシップ

2016.12.16

新型エンジンを発表したのは、夏の終わりのことだった。その名も『ミルウォーキーエイト(Milwaukee Eight®)』。ハーレーダビッドソンが1903年の創業以来、本社と工場を構えるアメリカ・ウィスコンシン州の都市の名と、8バルブであることをネーミングで示している。
1999年に登場した『ツインカム88』以来、18年ぶりとなる2気筒の新設計エンジンだ。

シアトル近郊タコマという街で、メディア向け技術説明会と試乗会が今年の9月上旬に行われた。そこへ参加したモーターサイクルジャーナリストの青木タカオさんに、ミルウォーキーエイトを通してハーレーダビッドソンの“ものづくり”をレポートしてもらう。

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伝統を受け継いだ新型エンジンが登場

ミルウォーキーエイトを目の当たりにしたときの興奮は、もしかしたら生涯忘れることができないかもしれない。プレスカンファレンスの会場に置かれた真新しいVツインエンジンは、これまで見たことのなかった新作エンジンであったが、奇想天外の奇抜さはなく、ハーレーダビッドソン伝統のVツインであることは誰の目にも明らかで、モーターのような電気仕掛けの味気ないものになっていなくて、まずはホッと胸を撫で下ろした。

開発陣による説明が始まると瞬く間に感情が高ぶり、「早く乗ってみたい!!」という気持ちがもう抑えられない。排気量は107キュービックインチ(1745cc)をスタンダードに、最上級機種CVO用として114ci(1868cc)も2本立てで用意。2017年式のツーリングファミリーとトライクに搭載されることがわかった。

美しい冷却フィンが刻まれているのを見れば分かるとおり、基本的には空冷エンジンだが、もっとも熱を持つ排気バルブまわりにオイルラインを設け、部分的な油冷機構を導入。さらにウルトラモデル用には、ウォーターラインを持つツインクールドエンジンが開発され、熱対策に万全を期したパワーユニットとなっている。

dsc_1201fixオイルラインを設けた油冷機構

dsc_1183fixツインクールドエンジン

エンジン設計をする上で大切なこと

そして従来のツインカムエンジンはその名のとおり、2本のカムシャフトを備えていたが、ミルウォーキーエイトではカムシャフトを昔ながらの1本に戻した。エンジン設計を担当したビル・パリ氏によれば「ハーレーダビッドソンらしい、鼓動感に満ちたフィーリングを取り戻している」という。そしてさらにこう教えてくれた。
「ユーザーからの要望に耳を傾け、我々はそれに応えました。850回転という極めて低いアイドリングを始め、充電力の向上、振動低減やクラッチレバー操作の負荷軽減、始動性を上げるなど、すべてライダーたちとともに膨大な距離を走り、どんなことが求められているのかを徹底的にリサーチし、その結果生まれたのが今回のミルウォーキーエイトなのです」

dsc_6731fixテクニカルエンジニアのビル・パリ氏

ユーザーが求めていることに応える。これまで新しいモデルを発表するたびに彼らは一貫してこう言い続け、これがハーレーダビッドソンの伝統であり、クラフトマンシップである。自らのプロダクツで途方もない距離を走り、ライダーらの意見に耳を傾け、守るべきものを大切に残しながらイノベーションを起こす。

創業以来、変わらない情熱とクラフトマンシップ

1909年から続くV型2気筒エンジン、1936年から採用し続けるOHVという現代のモーターサイクルではほぼ唯一となってしまったバルブ機構など、いつの時代もハーレーダビッドソンのビッグツインエンジンは変わらない。
ときにはストリートで生まれたカスタムを柔軟に取り入れ、ともに分かち合い、火に油を注ぐようにシーンを牽引していくこともあれば、レーシングシーンでライバルを打ち負かすことだけに情熱を向けることもあった。すべては1903年の創業者らから受け継ぐDNAであり、宿命である。

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ハーレーダビッドソンが110周年を迎えた3年前、カンパニーの名誉会長であり創業者の孫にあたるウイリー.G.ダビッドソン氏と話をする機会を得たが、「ニューモデルを開発するときに大事なことは、ハーレーダビッドソンの本質を見失わないことだ」と言っていたことを思い出す。
さらにウイリー.G.ダビッドソン氏のご子息でありカンパニーの副社長であるビル・ダビッドソン氏はこう付け加えた。
「デザインはもちろん、エンジニア部門やマーケティング部門など多くの部署と共同でプロジェクトを進め製品化に至るのですが、世界中のハーレーダビッドソンオーナーやディーラーへの聞き取り調査を行いユーザーがどんなものを欲しがっているかを考え、それを形にするのが我々の使命であり、その姿勢は創業以来、何も変わっていないのです」

isa0247fix3年前の創業110周年アニバーサリーセレブレーション時。(左から)ウイリー.G.ダビッドソン氏、カレン・ダビッドソン氏、ビル・ダビッドソン氏

1909年から脈々と受け継がれるハーレーダビッドソンのVツイン。9代目となるミルウォーキーエイトもまた我々が求めていたものを、彼らは作り上げたのだ。
そのテストライドには、我々の意見を聞き逃すまいと、エンジニアのビル氏も同行した。彼らの熱意が強烈に伝わる技術説明会、そして後日レポートするテストライドとなった。

親から子へ、そして孫へ。代々渡り受け継がれてきた誇り

それと最後にもうひとつ。ミルウォーキーの地には、今なお本社だけでなくファクトリーもあり、見学することができる。ユニフォームはないのだが、そこで働く人のほとんどがハーレーダビッドソンのTシャツを着ていた。
案内してくれた人に聞けば、会社が支給しているのではなく、それぞれが思い思いに購入して自由に着ているのだとか。
そして、そこには3代にも渡って務める筋金入りの職人もいる。誰もが“キング・オブ・モーターサイクル”をつくっているという誇りを持っていて、こうした人たちの手によってハーレーダビッドソンは組み上げられているのだ。

きっといま、ミルウォーキーエイトのボルトを締め付ける彼の父はショベルヘッドのピストンリングをはめ、お爺さんはナックルヘッドのクランクを組んだのだろう。

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ハーレーダビッドソン 歴代エンジン

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01.1909-1911:アトモスフェリックVツイン(ATMOSPHERIC V-TWIN)
02.1911-1929:Fヘッド(F-HEAD)
03.1929-1973:フラッドヘッド(FLATHEAD)
04.1936-1947:ナックルヘッド(KNUCKLEHEAD)
05.1948-1965:パンヘッド(PANHEAD)
06.1966-1984:ショベルヘッド(SHOVELHEAD)
07.1984-1999:エボリューション(EVOLUTION)
08.1999-:ツインカム(TWINCAM)
09.2017-:ミルウォーキーエイト(MILWAUKEE-EIGHT®)

Text:モーターサイクル ジャーナリスト 青木タカオ

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