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四半世紀を超えて今なお愛され続ける人気モデル「ファットボーイ」その変遷を辿る

2018.11.26

1991年のデビューから28年、時代に合わせて進化しつつも独特のスタイルとカルチャーはそのままにラインナップを飾るハーレーダビッドソンの人気モデル「ファットボーイ」。同モデルのデビューから現在までのヒストリーを辿ります。

ショベルヘッドからエボリューション、そしてソフテイルフレームの誕生

まずは「ファットボーイ」が誕生するまでの歴史を、ざっと振り返ってみましょう。1960年代後半、ハーレーダビッドソンは「AMF(American Machine and Foundry)」という巨大企業の傘下にありました。それが1981年、創業者であるハーレー家とダビッドソン家を含む13人の役員たちによりバイバック(買い戻し)され、事業を再スタートしたのです。

そして新しく生まれ変わったハーレーダビッドソンは、独立からわずか3年後の1984年に新型エンジン「エボリューション」と「ソフテイルフレーム」を採用したニューモデル『FXST ソフテイル』を発表します。

新時代のハーレーダビッドソンの象徴として1984年に生まれたエンジン「エボリューション」

1966年から1983年までハーレーの主要エンジンを務めたショベルヘッドエンジン以来、実に19年ぶりの新設計エンジン「エボリューション」は、ボア80.8mm×ストローク108mmの総排気量1,340ccでオールアルミ製。燃焼室への混合気吸入もよりスムーズになり、スワール効果によって燃焼効率も飛躍的に向上しました。このニューエンジンの登場により、トラブルの多かったAMF時代に揶揄された「ハーレーは壊れやすい」というイメージを見事に払拭し信頼を取り戻しました。

フレームのネックからリアにかけてまっすぐ美しいトライアングルシルエットを形成するソフテイルフレーム

時を同じくして誕生したソフテイルフレームは、1950年代までハーレーが基本骨格としていたリアサスペンションを持たないフレーム「リジッドフレーム」のシルエットをそのままに、現代版にアレンジしたもの。ネーミングも「ハードなテイル(尻尾)」に対して「ソフトなテイル = ソフテイル」というものになったのです。

見た目はあたかもリジッドフレームのようでありながら、フレーム下部にリアサスペンション機能を備えるソフテイルフレームは、現代のロードシーンにおいてより快適にライディングが楽しめるように設計された画期的な構造となっており、ここにエボリューションエンジンを搭載したソフテイルファミリーが続々と形成されていくのです。

1990年代のニュージェネレーションとして登場したファットボーイ

1990年にデビューしたFLSTF ファットボーイ

『FLSTF ファットボーイ』がデビューしたのは1990年。前後16インチのディッシュホイールや幅の広いリアフェンダー、大きなヘッドライト&ナセルを備えたフロントマスク、ファットバーと呼ばれる太いハンドル、ショットガンマフラーといった独創的な装備による力強くたくましいスタイルが、強いインパクトを与えました。

初期型だけがフレームにクロームパウダーコートを施し、バイク全体を覆うクロームを引き立てるためにロッカーボックス、ダービーカバー、タイマーカバー、イグニッションスイッチにイエローの装飾が加えられています。翌1991年型では、エボリューションエンジンにケブラー&グラファイト製のガスケットが採用されるなど、細部の改善が図られます。

1980年代後半のアメリカで高い人気を誇ったFLST ヘリテイジソフテイル

そのファットボーイがデビューした1990年代初期、アメリカで高い人気を誇っていたのは先輩モデル『FLST ヘリテイジソフテイル』でした。ファットボーイはそのヘリテイジソフテイルのファクトリーカスタムモデルという位置づけで、『FLST』と『FLSTF』というモデルコードからも兄弟モデルであることがお分かりいただけるでしょう。米カリフォルニアのハーレーダビッドソン正規ディーラーでは、その人気の高さからヘリテイジソフテイルは終始在庫切れ。そしてファットボーイは、その人気モデルと比較される宿命を負っていました。

一躍人気モデルの仲間入りを果たした「ターミネーター2」への登場

米ミルウォーキーのハーレーダビッドソンミュージアム内に展示されている 映画「ターミネーター2」に登場した1991年 ファットボーイ

ファットボーイの人気を急上昇させたのは、1991年公開の映画「ターミネーター2」で起用されたこと。アーノルド・シュワルツェネッガー扮するターミネーターがファットボーイを駆り、巨大トラックに追われながらロサンゼルス市街を爆走するシーンが観客に大きなインパクトを与えました。同シリーズ史上最大の興行収入を記録した作品とともに、ファットボーイの存在は一躍世界中に知れ渡ることとなったのです。今も「ファットボーイと言えばターミネーター2」と表現する人が少なくないなど、当時の印象の強さを物語るエピソードがあります。

ラインナップに欠かせないモデルとなったファットボーイは、ここから進化と熟成を重ねていきます。

新型エンジンの搭載、仕様変更とバージョンアップを果たした2000年代

エンジンをツインカム88Bとし、大きくバージョンアップしたFLSTF ファットボーイ 2000年モデル

2000年モデルからはVツインエンジンが「ツインカム88B」に変わります。このパワーユニットはその名のとおり、前後シリンダーに1本ずつ計2本のカムシャフトを備えているのが大きな特徴です。排気量は88キュービックインチ(1,450cc)に拡大、そのエンジンをそのままフレームにマウントすることで生じる振動対策として、「カウンターバランサー」を搭載する「B」(バランサー)エンジンが採用されました。

ツインカム96Bエンジン(排気量1,584cc)を搭載、トランスミッションも6速化された2007年版 FLSTF ファットボーイ

2007年モデルからはストロークを111.1mmに伸ばし、排気量を96キュービックインチ=1,584ccにスケールアップしたエンジン「ツインカム96B」を搭載。5速だったトランスミッションは6速化され、クルージング性能を高めます。

吸気機構をキャブレター式からコンピューター制御によるフューエルインジェクション式へと変更、さらにプライマリーチェーンを自動調整式にし、ドライブベルトも強度と耐久性を向上した1インチ細いものへと変わりました。16インチだった前後ホイールは17インチとなり、リアタイヤの幅は150mmから200mmへと太くなったのです。

この際、ニュートラルギア以外ではクラッチを切らなければセルモーターが回らない誤発進防止のロックスイッチが備わり、スターターシステムも新型に。オイルポンプ容量が増えるなど、細部にも大幅な改良が加えられています。

ダークカスタム化したバリエーションモデルも登場

ファットボーイのロースタイルモデルとして2010年ラインナップに加わった『FLSTFB ファットボーイロー』

バリエーションモデルとして『FLSTFB ファットボーイロー』が加わったのは、2010年からでした。光沢のあるクロームを排した“ダークカスタム”を纏い、車体はブラックとサテンクロームのコントラストで落ち着いた印象です。前後サスペンションが1インチほどロープロファイル化され、足着き性を向上。加重時シート高は620mmと、スタンダードなファットボーイと比べて25mmもダウンしたのです。

2011年モデルのツーリングファミリーの一部機種で排気量1,689ccへとさらに拡大したツインカム103エンジン、ソフテイルファミリーでも2016年式からツインカム103Bエンジンを搭載します。容量を増やしたエアクリーナーケースやプロフィールを見直したカムが新たに採用され、エンジン性能はハイアウトプット(高出力)化。117Nm / 3,000rpmだった最大トルクを122Nm / 2,750rpmまで向上させたのです。

排気量1,801ccというハイパワーエンジン「スクリーミンイーグル ツインカム110B」を搭載した『FLSTFBS ファットボーイS』

2016年モデルと2017年モデルには「ファットボーイロー」をベースに、よりブラックパーツを増やしたダークカスタムの車体に「スクリーミンイーグル ツインカム110B」エンジン(排気量1,801cc)を搭載する『FLSTFBS ファットボーイS』も登場。ツインカム時代末期に登場した、まさにスペシャルなファットボーイだったと言えるでしょう。

エンジン、フレーム、デザイン……すべてが刷新されたNEWファットボーイ

そして2018年モデルでソフテイルファミリーはフレームとエンジンを一新し、ファットボーイもまたすべてが生まれ変わります。

ソフテイルファミリーにも搭載されるようになったミルウォーキーエイトエンジン。

心臓部は、伝統と革新が融合した新しいV型2気筒エンジン「ミルウォーキーエイト」となりました。45度のシリンダー挟み角や空冷エンジンならではの美しい冷却フィン、OHV、別体式トランスミッション、プライマリーチェーンケースを持つトラディショナルな構造は基本的には変わっていませんが、8バルブやデュアルスパークといった新技術を採用し、カムシャフトはまた1本に戻されています。

メインフレームもカーボンスチール製の完全新設計に。バックボーン後端からモノショック式のリアサスペンションが三角形状のスイングアームへ繋がり、衝撃吸収性やトラクション性、旋回力など運動性能を飛躍的に高めました。フレーム単体での剛性を65%高めつつも軽量化を実現し、シャーシ全体の剛性も34%向上。『FLFB ファットボーイ』では16kgの軽量化を実現しています。

リアホイールを中心に美しいトライアングルを描く新型ソフテイルフレームが特徴的なニューファットボーイ

新生ファットボーイは2本立ての排気量設定となり、107キュービックインチ(排気量1,745cc)のミルウォーキーエイト107を『ファットボーイ(FLFB Fat Boy™)』に、114キュービックインチ(排気量1,868cc)のミルウォーキーエイト114を『ファットボーイ 114(FLFBS Fat Boy™ 114)』に搭載。最大トルクはツインカム103Bの126Nm / 3,000rpmを大きく凌ぐ145Nm / 3,000rpmで、ミルウォーキーエイト114では155Nmを発生し、走りはよりパワフルになっています。

エンジン懸架は鼓動感を乗り手へダイレクトに伝えるリジッドマウント式で、ソフテイル用のエンジンではカウンターバランサーをデュアル装備しているのが特徴です。ライディング中に心地良い鼓動が感じられ、味わい深い乗り心地を実現しています。

ナセルと一体型になりつつもファットボーイらしいフロントマスクはそのままに継承

太くたくましいスタイルもまた、伝統と革新が融合に他なりません。大柄なナセルにLEDヘッドライトが埋め込まれ、大胆で勇ましいフロントマスクを演出。フロントサスペンションはデュアルベンディングバルブフォークにグレードアップされ、ファットボーイのアイコンとも言えるディッシュホイールやワイドフェンダー、ファットハンドルバー、タンクコンソールのアナログ式5インチメーターといった装備は、洗練されたデザインへと変貌しつつも健在です。

240mmというファットなリアタイヤを履き、テールエンドの迫力が一段と増しました。アルミ製ホイールも前後18インチに大径化され、鈍く光るサテンクロームを多用。筋肉質で重厚感のあるフォルムを強調しています。

映画「ターミネーター2」の撮影に用いられた本物のファットボーイが日本に上陸!

デビューまもない頃にファットボーイを一躍スターダムに押し上げた映画「ターミネーター2」。その撮影に実際に用いられたファットボーイの実物が、このほど日本上陸を果たすことになりました。

映画「ターミネーター2」の撮影に登場した本物のファットボーイ(写真提供:「東京コミコン2018」 広報・PR事務局)

2018年11月30日(金)から12月2日(日)の3日間、千葉県千葉市の幕張メッセ 9・10・11ホールにて開催される「東京コミックコンベンション2018」(略称:東京コミコン2018)が、アメリカのオークションに出品されたこの実物のファットボーイを落札、同イベント会場に展示されるのです。

映画に登場する少年ジョン・コナーを乗せるために取り付けられたフレーム前部のステップや、ちらりと見えるマシン左後部の小さなサドルバッグと、劇中に登場するファットボーイの特徴がそのまま残されています。このファットボーイがまとうあの「ターミネーター2」の空気感そのものに触れられるまたとない機会、間近で感じ取ってみてはいかがでしょうか。

これからもラインナップの代表格として君臨し続ける

デビューから28年、新たな時代へとまた一歩を踏み出したファットボーイ。デビュー当時の面影はそのままに、時代に合わせてモーターサイクルとして進化し続けるそのさまは、ハーレーダビッドソンにとっても象徴的な存在だと言えるでしょう。ファットボーイはこれからもラインナップを代表する人気モデルのひとつとして、これからの四半世紀、これからの100年と愛されていくに違いありません。

東京コミコン2018

Text:モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ
画像提供:ハーレーダビッドソン ジャパン

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