Touch The Freedom
ARTICLE

アグレッシブな走りを生み出す、スポーツスターの歴代エンジン。そのメカニズムと変遷を辿る

2017.10.20

現在では883ccと1200ccの2本立てとなっているスポーツスターの空冷Vツイン。独特の4カムエンジンは、1957年の初代『XL Sportster』から受け継ぐものだが、60年にも及ぶスポーツスターの歴史を振り返ると、エンジンにもたくさんのストーリーがある。そのメカニズムと変遷を、モーターサイクルジャーナリストの青木タカオさんにレビューしてもらおう。

スポーツスターならではの空冷Vツイン

「ビッグツイン」と呼ばれる大排気量エンジンは、現行では『ミルウォーキーエイト(Milwaukee Eight®)』がそれに相当しますが、その特徴のひとつに1カム(ツインカム時代のみ2カム)、別体型ミッションであることがあげられます。
それに対し、スポーツスターは1957年の登場以来60年に渡って、4カム、一体型ミッションを採用し続けています。
ビッグツインを積むツーリングファミリーやソフテイルファミリーと、スポーツスターファミリーでは、排気量だけでなく、エンジンの構造自体が異なるのです。

ビッグツイン→1カム、別体型ミッション
スポーツスター→4カム、一体型ミッション

1カムとか4カム、いきなり専門的なトピックになってしまいますので、興味の無い方はここは読み飛ばしていただいても結構です。
まず、シリンダーヘッドに開けられた吸気ポートと排気ポートには、それぞれ吸気バルブと排気バルブが設置されていて、そのバルブが開いたり閉じたりすることで、燃焼室にガソリンと空気の混ざった混合気が送り込まれたり、燃焼ガスが排気されます。
そのバルブをプッシュロッドとロッカーアームを介して押し動かしているのが、回転するカムシャフトに取り付けられた卵形断面のカムです。
バルブが開く量はカム山の高さで決まります。チューニングパーツに「ハイカム」というものがありますが、これはカム山がノーマルより高くつくられ、バルブリフト量を大きくし高回転域でより多くの混合気を取り込もうとするものです。
話が少し逸れましたが、1本のカムシャフトですべてのバルブを制御するのが1カム方式で、部品点数を少なくでき、クランクケースをコンパクトにつくれ燃費も良いなどのメリットがあります。
それに対し4カム方式は、バルブごとにカムを独立させ、吸気と排気それぞれのバルブタイミングを自由に組み替えることができます。プッシュロッドを真っ直ぐに配置できるため高回転化にも有利で、レースでの使用を考えれば4カムは理想的です。

レーシングシーンで活躍した「WR」

1941年 WR

それでは一気に歴史を遡って行きましょう。1930年代に入ると、ハーレーダビッドソンのエンジンは、それまであった単気筒が廃止され、2種類の空冷Vツインに整理されます。
ひとつは“ビッグツイン”と呼ばれる1340ccと1200cc、そしてもうひとつが“ベビーツイン”と呼ばれる750ccでした。“ビッグツイン”という呼ばれ方は、この時代に始まっていたんですね。
そして、1937年の『W』はベビーツインを搭載したモデルでしたが、4カム方式が採用されていました。このとき『W』が17ps、ハイコンプレッションの『WL』で21.5ps、エクストラ・ハイコンプレッションの『WLD』が24.5ps、コンペティション仕様の『WLDR』では29psを発揮しました。また、1941年にデビューした750ccサイドバルブ4カムエンジン搭載のフラットトラックレーサー『WR』は戦後も大活躍し、ハーレーダビッドソンが高性能であることをレースでアピールし続けました。

1952年K model

そして1952年の『K Model』はその4カムを引き継ぎ、さらに一体型ミッションが採用されていました。ここで一体型ミッションが登場しましたね。冒頭でスポーツスター=4カム、一体型ミッションと言いましたが、初代『XL Sportster』が発売される5年前に、その特徴を持つエンジンを『K Model』は積んでいたことになります。
一体型ミッションというのは、その名の通りミッションケースがエンジン・クランクケースと一体成型になっていることを意味しており、これにより強度を上げフレームへの負担を減らすことが可能となりました。

883「パパサン」の誕生

1977年XLCR

しかも『K Model』のメインフレーム(Kフレームと呼ばれる)は1957年式の『XL Sportster』に用いられ、その後も改良を重ねつつ、1977年に『XLCR』(このモデルよりCRフレームに変更)が発売されるまでスポーツスターの骨格となりました。
Kフレームがいかに先進的で性能が優れていたかは、ライバルであった英国車勢より2年ほど早くスイングアーム式のリアサスペンションを備えていたことからも判ります。

1954年 KH

スポーツスターのルーツは4カムを早くから採用し、レーシングシーンで活躍した『WL』や『WR』と考えることもできますし、一体型ミッションとスポーツスター初期のメインフレームを持つ『K Model』が元祖であると捉えるのも間違いではないと思います。
しかし、忘れてはならないのが1954年の『KH Model』です。このモデルで、エンジンをストロークアップし、69.85mmのボアをそのままにストロークを96.85mmから115.8mmに延長。746.63ccだった排気量を883ccとし、いわゆる“パパサン”がここで誕生したのです。

1957年の初代XL スポーツスター

1957年 XL Sportster


SHOVEL HEAD SPORTSTER 1957〜1985

そしてようやく、1957年の初代『XL Sportster』となるわけですが、ここでサイドバルブ方式だったエンジンがOHV方式に生まれ変わります。搭載されるニューエンジンはボア×ストロークを72.8×96.8mmとする「ショベルヘッド」でした。リンカートのキャブレターを備え、5500回転で42psを発揮する高性能エンジンです。

1960年 XLCH

1959年モデルからは圧縮比を7.5から9に上げたハイコンプレッションモデル『XLH』と、コンペティションホット『XLCH』がラインナップに加わり、この頃の『XLH』はバッテリー点火、『XLCH』はバッテリーレスでマグネトー点火でした。写真はミルウォーキーにあるハーレーダビッドソンミュージアムに展示されている1960年式『XLCH』です。
1967年には『XLH』にセルスターターが標準装備されます。『XLCH』はキックスタートのみですが、70年にバッテリー点火になっています。この頃のキャブレターは、ティロットソン製です。

【次ページ:1977年に発売したカフェレーサーXLCRが誕生】

HARLEY-DAVIDSON JAPAN

FOLLOW US!!
PREV

POPULAR RANKING

NEXT

NEW ARRIVALS