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プロのテクニシャンを育成するハーレーダビッドソンの専門学校、東京工科自動車大学校 品川校を訪ねた

2017.06.02

二輪専門はもちろん、1ブランドに特化した整備士養成課程がごくわずかにしか存在しない中、ハーレーダビッドソンのテクニシャンを育てる専門学校があるのをご存じだろうか。2009年に開設された、東京工科自動車大学校 品川校のハーレーダビッドソン専科。そのユニークで興味深いカリキュラムのレポートをお届けする。

教材として用意されるハーレーは60台以上

初めてハーレーに触れる学生たち

B11教場と示された校舎の教室には、いささか騒々しい歓喜の声が響き渡っていた。無理もないらしい。4月末の某日、午後一番の授業では、この春入学した1年生が初めてハーレーダビッドソンに触れるのだという。そろいの青いツナギにはまだ染みひとつなく、着ているというよりは着せられている感じがありありとした学生も少なくない。初々しいとはまさにこの雰囲気だ。ハーレー各ファミリーの実車数台をグループ別で囲み、車台番号の読み解き方を実践。教員が放った「テストに出るからね」の言葉で、また大きな声が弾けた。

日本唯一のハーレーダビッドソン専科

学校法人小山学園を母体にした東京工科自動車大学校 品川校。ここには現在日本唯一のハーレーダビッドソン専科(自動車整備科二輪コース・2年制)が設けられている。ハーレーダビッドソン ジャパンとの提携による2009年の開設以来、約250名の卒業生を送り出してきた。ここを巣立った学生が向かうのは、基本的に全国の正規ディーラーだ。

自動車整備科科長 蓬田 誠さん

「専科最大の特徴は、皆が同じ方向を向いていることです。ハーレーとの出会い方は様々でも、卒業したら全員がハーレーのテクニシャンになるという共通の目標を抱いていますから、教える側も教えやすいし、学ぶ側もこれほど学びやすい環境はないと思います」
これは、1ブランドに特化した専門課程のメリットをたずねた際の、自動車整備科の蓬田 誠科長の言葉だ。蓬田科長の「学びやすい環境」の例を挙げると、一つは60台以上のハーレーが教材として用意されていて、2年間で90分×1256時限の授業を行っていること。ちなみに教材用車両はアメリカ本社から寄贈された本国仕様のレアなモデルもあるというから、ハーレーファンとしても気になるところだ。加えて、実習ではSSTと呼ばれるハーレー専用の工具を使えること。電子制御関連の診断機にしても、一般的な整備士養成課程では汎用機を使用するのが常だが、ここでは各ディーラーに備わっているハーレー純正機器を使用する。
「さらに8期生からは、本国のハーレーから個々にIDが支給され、HARLEY-DAVIDSON UNIVERSITY(以下、HDU)のオンライントレーニングが受けられるようになりました。この夏には私自身がHDU認定のトレーナー資格を取得するので、より高レベルの資格を有して卒業できる学生が増えていきます。学校単位でそこまでできるのは、アメリカにある二輪専門整備学校と本校だけです」

年齢の幅が広くても好きなことに取り組む思いは同じ

先の蓬田科長の発言の中に、「ハーレーとの出会い方は様々」という言葉があった。実際には家族や親戚がハーレーに乗っていた場合や、街で見かけて憧れたケースが大半だという。数少ないがハーレー所有歴を持つ学生がいないわけでもないらしい。ただ、専門学校の特性上、高校卒業後の進路として入学する者が多いから、さすがに自分でハーレーを持つのは早いのだろう。
「でも、4割ほどは一度社会人を経験した学生ですよ」と蓬田科長。「今年の卒業生には、ハーレー専科に属しながら学べる2級自動車整備士資格を取得した62歳の学生がいました。年齢の幅が広くても、好きなことに取り組む思いは同じ。そこもまた専科のいいところです」
ならば学生にハーレー専科の実際を直接たずねてみよう。まずは新品のツナギをまとった1年生から。始まったばかりの授業はどうだろうか。最初はこの春高校を卒業した畠中 志朗さん。
「もともとバイクが好きで、いつかはハーレーと思っていたのでこの専科に来ました。授業はめちゃくちゃ楽しいです。自分が好きなものに触れるなら、高校時代は苦手だった物理等も学ぶ意欲が出てきます」
わずか数名だが女子学生もいる。畠中さんと同じく高校卒業後に入学した諏波 遥香さんは、女性白バイ警官を見てバイクに興味を抱いたそうだ。
「二輪関連で進路を探していてハーレー専科を見つけました。周囲からは大反対でした。女の子が整備士なんて無理だって。でもだからこそ、自分のやりたいことをやろうと。授業はおもしろいです。ただ、取り回しはまだ体力的にキツいです」
社会人経験を持つ三浦 政直さんは、同期最年長の40歳。自動車用ナビやオーディオの設計者を経て入学したという。
「僕もハーレーが好きで、スポーツスターを持っています。区切りの年齢で新しいことに挑戦しようと決めました。久しぶりの学校生活に戸惑いつつも、若い仲間と学べるのは楽しいです。けれど、エンジニアをやってきたので、彼らの見本にならなければというプレッシャーもあります」

左から、畠中 志朗さん、諏波 遥香さん、三浦 政直さん

卒業後の夢をたずねてみた。畠中さんは即答だった。「HDU認定の最上級ランクのマスターになります!」。女性の諏波さんも勇ましく同じ目標を掲げたが、「この世界は女性が少ないので、お客さんから甘く見られないような、まずは信頼されるテクニシャンになります」
三浦さんの場合は、夢というより現実的な計画があるという。「45歳までに自分のカスタムショップを持ちたいんです。学校を卒業したらディーラーに勤めて実践的な経営も学びたい。とにかく時間がないので、1日たりとも無駄にできませんね」

ハーレーのことを学ぶなら最適な場所

最高のサービステクニシャンを目指して

次に2年生に話を聞いた。インタビューに応じてくれたのは、27歳の松島 勇斗さんと、23歳の橋立 勇樹さん。年齢が示す通り、いずれも高校新卒入学ではない。松島さんは自動車関係会社の勤務経験後。橋立さんは自衛隊を経てハーレー専科の扉を叩いた。二人の共通点はまだある。互いに自分のハーレーを持ったことがあり、そして現時点で卒業後に勤めるディーラーが確定している。松島さんはハーレーダビッドソン 三鷹だ。
「インターンという形で働かせてもらっていますが、今は洗車と磨きのみ。工具を握るなんてまだ先の話ですね。やっぱり現場の先輩方の技術レベルや立ち居振る舞いは高度です。僕らも学校では一生懸命勉強していますが、プロとの差は歴然。刺激になります」
一方の橋立さんはマスターズから内定をもらい、松島さん同様にインターンとして何度も九州に出向いているという。
「整備自体もそうですけど、ハーレーの基礎知識が全然追いつきません。先輩が説明してくれることの半分もわからなくて。ここにいる内に覚えなきゃならないことがますます増えました」


左から、松島 勇斗さんと、橋立 勇樹さん

年齢は関係ない、ハーレーが好きなら

こうした在校生のインターン経験は、勤め先とのマッチングを図るために奨励しているのだと蓬田科長は話してくれた。
「残念ながら、整備士全般の離職率は高めです。ハーレー専科に限っては下がりますが、それでもテクニシャンを辞めてしまう人は少なからずいます。理由の大半は、仕事自体ではなく人間関係なんですね。だからこそ、求人情報自体から自分で判断し、内定が出たら現場を体感するのが大事です。そしてまた彼らが口をそろえたように、現場の技術力や意識は文字通りのプロ級ですから、実際に体験して何一つ悪いことはありません」
2年生の二人には、これからハーレー専科を目指す人に向けてメッセージももらった。松島さんは言う。年齢は関係ないと。
「ハーレーが好きな気持ちと、テクニシャンになりたい強い思いがあれば大丈夫」。橋立さんは「わからないことがあれば細かく教えてくれます。ハーレーを学びたければ、こんなに楽しい場所はないですよ」と語ってくれた。

蓬田科長にも卒業生に向けた期待を聞いた。
「我々としては、ハーレーダビッドソン ジャパンの協力のもと、HDUのプログラムとの連動性を含め、より高度な専門カリキュラムを組めるよう努力していきます。その上で一人でも多くのOB・OGがマスターになり、後輩を引っ張っていってほしいですね。もちろん卒業生の活躍は気になります。ブルースカイヘブンのイベント会場では毎年ディーラーの方に会って当校の卒業生の話を聞きますが、正直なところドキドキですね(笑)」
最後は、品川校の竹尾 和也校長に締めくくってもらおう。
「自信を持って言えるのは、ハーレーのテクニシャンになるなら国内ではここがベストだということです。何より実習内容が濃いですから。余談になりますが、オープンキャンパスでは見学生の親御さんも同伴されることが多く、実習車を眺めたハーレーファンのお父さんは自分が学びたいほどだとおっしゃってくれます」

東京工科自動車大学校 品川校の竹尾 和也校長

東京工科自動車大学校 品川校のハーレー専科。ハーレーオーナーであれば、こういう場所を自分の子供や親戚に紹介したくなるに違いない。場合によってはオーナーである自分も。前記の62歳の卒業生は定年後に入学したというから、さもありなんだ。
いずれにせよ、時が来れば自分のハーレーを預ける可能性が高い志ある者たちが、今は日々懸命に学んでいると思うと心が温まるのではないだろうか。プロのテクニシャンとして会える瞬間を楽しみに待ちたい。

2018年4月、ハーレーダビッドソン二輪車整備研修が全国5校に拡大!

2018年4月、全国4校の整備専門学校で、ハーレーダビッドソン二輪車整備研修を導入することが決まった。ハーレーダビッドソン ジャパンが提携を交わしたのは以下の学校だ。

角川学園 花壇自動車大学校(宮城県仙台市)
名鉄学園 名鉄自動車専門学校(愛知県丹羽郡大口町)
岡崎学園 大阪自動車整備専門学校(大阪府大阪市)
ぜんりょう学園 専門学校 北九州自動車大学校(福岡県北九州市)

各校の拠点を見ればわかるように、既存の東京工科自動車大学校 品川校を含めると東北・関東・中部・関西・九州の各地域にハーレー専門の教育機関が置かれることになり、より一層ハーレーダビッドソンカルチャーの拡充が期待できる。4つの新たな整備専門学校では、来春入学の1期生募集が間もなく始まる。

Text: 田村十七男
Photos:横山マサト
取材協力:東京工科自動車大学校 品川校

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