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新しい相棒とともに──。70’sスタイルが街に映えるアイアン1200と行くナイトラン

2018.10.18

「週末まで待てない」と、仕事疲れを吹き飛ばす昂りとともに、新しい相棒と夜の街へと駆け出す。相棒はハーレーダビッドソン アイアン1200。都会に映える1970年代チョッパースタイル・スポーツスターのヘッドライトがハイウェイを照らし、まわりの風景を一変させてゆく。

ひと目見たときから「俺の相棒となるべきバイクだ」と感じさせてくれた『アイアン1200(XL1200NS Iron 1200™)』。納車されてはや一ヶ月、週末のたびに出かけては“ハーレーに乗る楽しさ、歓び”を感じている。

そんなある日の仕事帰りに、小気味良いエンジン音とともに大通りを走るハーレーの姿を目にした。チョッパーライクなハーレーを駆るそのライダーは、愛車とともにネオンが光る夜の街へと消えていった。

そうだ、俺も久々に夜の街へ駆け出してみよう。

あくる日、早々に仕事を切り上げた俺は家路を急ぎ、アイアン1200と一緒に出かけることにした。

オフになったんじゃない、これが俺のスイッチオン。

スーツを脱ぎ捨て、ジーンズにネルシャツを羽織る。スイッチを切り替えた、オンからオフに……いや、今日は逆だ。夕暮れ時、普段とはちがう高揚を覚える。

最近見つけたカフェへ向かった。まるでアメリカ西海岸にでもありそうな雰囲気で、愛車を眺めながらくつろげるロケーションが気に入っている。

コーヒーは生活にかかせない。一息つくとき、残業に追われたとき、寝覚めの一杯、そして気持ちを切り替えるとき。空は急ぎ足のマジックアワーで赤く染まっていき、しだいに青から藍へと変化する。

いま、昼と夜の狭間にいる。

終業後だが、それでも仕事は追いかけてくる。いったい何度打ったのだろう、「いつも大変お世話になっております」。いつも大変お世話になっております。今晩は勘弁してください……とは送れないな。「明日対応いたします」と、打ち込み、サイレントモードに切り替えた。

夜の帳が落ちてきた。さあ、そろそろだ。

ヘルメットとグローブ、そしてアイアン1200。今夜の俺には、これだけあれば充分だ。

行き先にあてはない。ただ気の向くままスロットルを開けるだけだ。

日が暮れても、平日の都内は忙しない。初めてバイクで夜の東京を走ったとき、タクシーの勢いに慌てたのが懐かしい。ただ待っていても道は譲ってもらえない。自分から意思を示すことが求められる。

昼も夜も、この街では四六時中戦いが続く。弱っている者は嵩にかかり叩かれる。社会人とは、こうも気を張り続けなくてはならないものなのか。

そんな荒波を軽快に乗りこなす先輩たちの姿が眩しかった。いまの自分はどこまで追いつけているのだろう。

アイアン1200の鼓動に問う。「まだまだ早いんじゃないか」そんな答えが返ってきた気がした。しかし、気分は悪くない。今夜はいい予感だけが胸を占めている。

帰路につく車の流れに逆らうように、高速道路を疾走する。

帰宅ラッシュの首都高をゆく。

商用車を見るたび、普段の自分が重なる。いつもは俺もそっち側の人間だ。「早く帰りたい」と一心に思いハンドルを握る日々。その理由は何だ。疲れたから? 一秒でも長く眠りたいから?……マイナスの感情に支配される日常。

いまはどうだ。そんな彼らを尻目にバイクに乗る優越感? いや、ちがう。
どうでもいい、というのが本音だ。俺はひとりでバイクに乗っている。誰の邪魔もしないし、誰からも邪魔をされない、みんなそれぞれ勝手にやろうぜ。いいかげんだが、それだけだ。

お月様もにっこり微笑んでいる。

進路を南に決めた。ラッシュアワーを過ぎたようで、道を独占する。
アイアン1200のハロゲンが行く先を照らし出す。

アイドリングでの強い鼓動は、スピードが上がるごとに集約されていく。トップギアで高速を流せば、エンジンと自分の心臓が同化したかのような快感を得る。

見た目に惚れて選んだのだが、こうも人間味に溢れるバイクだったとは。すっと馴染み、一瞬で俺の懐に入り込んだアイアン1200。

このチョッパーハンドル、このシングルシート……一見無理があるポジションも、いまとなってはすっかり馴染んでしまった。ライダーにこびないオマエこそが、俺にとっての唯一の相棒だ。

こうして夜道を走っていると、昔の記憶が蘇る。
高校時代、言葉にできない衝動に駆られ、原付で夜を疾走し続けた。
田舎の海沿いをあてもなく走り、夜明けから逃げるようにアクセルを回す。
けれども必ず、朝は来る。月の魔力が日の出にかき消され、正気に戻り……何だか少し恥ずかしくなって、家路へ向かうのが常だった。
その行動に意味があったのか、なかったのかは分からない。
ただ、走って走って走り続けた。

夜の異常で、昼の平静を保っていた青春期。懐かしく、気恥ずかしい思い出ばかりが浮かぶ。

いまもその延長線上にいるのだろう。街で偶然見かけたハーレーに、なぜか衝き動かされた。忘れてはいけないような、追いかけないといけないような、そんな思いが込み上がってきたかのようだった。

ハイウェイを駆け抜けて横浜へ。佇む愛機と静かに過ごす。

横浜のベイエリアは思った以上に静かだった。ときどきカップルが横切る。お互い、いい時間を過ごそう。

俺の相棒は、夜が似合う。

連休でツーリングに出た最終日、帰らなければならないのに、自宅からどんどん遠ざかり、名前も知らない町で夜半を過ぎたことがあった。自動販売機で缶コーヒーを買い、ただ相棒を眺めていた。

翌日の仕事が頭によぎったが、なんだかまだできるだけ、こいつと一緒にいたいと思った。

真っ暗な田舎の県道沿線、「まだまだ旅はこれからだろ」とアイアン1200が訴えかけてくるようで、始末に終えない。
缶コーヒーを飲み干し、もう散歩は終わりだよと、飼い犬をなだめるようにそのときは家路に着いた。

1970年代、アメリカで流行したチョッパーカスタムスタイルを取り入れたマシンだと聞いた。真っ黒なボディが闇に溶け込み、それでいて存在感を放つ。

タンクのレインボーグラフィックもレトロだ。1975年生まれのショベルスポーツXLCHのグラフィックをアレンジしたデザインが、カリフォルニアの街中を舞台にした古い映画を思い起こさせる。

そして、高く持ち上がったエイプハンガーと流麗なシルエット。不良性と美しさの調和、微妙なバランスが俺の心を打ち抜いた。

キックスターターなどなく、セル一発で簡単に始動するハーレーらしからぬ優れたバイクではあるのだけども、ますます高性能になっている他のバイクとは違う趣を感じる。

正直なところ、バイクにハイテクなんて求めちゃいない。

雨が降ればびしょ濡れになるし、クラッチを切らなければエンストする。荷物なんか全然積めない、それがバイクだ。アイアン1200を選んだのは、便利さ、高効率といった、現代に求められるそんな慣習から少しでも離れたかったからだ。

なるべく原点に近づきたかった。

相棒と語らうようなナイトラン。いつまでも、どこまでも。

ベイブリッジを一望する。

以前、偶然に見つけたとっておきの場所だ。夜に来るならバイクで、アイアン1200と一緒に。そう考えていた。

ここへ来て何をするわけでもない。そもそも自販機ひとつない。けれど、自然と足はここへ向かっていた。

バイクに乗るようになって、旅は自由になった。予定を立てず、目的を持たず、なんとなく北へ、南へ、東へ、西へ、走った。

大人になり、付き合いで仲間と旅行に行くようになって、「これが一般的な旅行というやつか」と妙に新鮮な思いをしたことがある。

しかし、ハーレーで旅に出かけるときは、なるべく予定は立てない。
もちろん旅は十人十色で、計画性重視のツーリングを否定するわけではない。
何ものにも縛られず、自由に過ごしたい。
ただの自分の流儀だ。

いまは、アイアン1200と夜をともにするだけでいい。今宵、何もない場所へ向かっていた理由はそれかもしれない。

どうしてこんなに惹かれるんだろう? 爽快だから、鼓動が心地いいから、自由だから。ちがう。言葉にすればするほど薄っぺらく思えてくる。言葉にできない楽しさが、ハーレーダビッドソンには詰め込まれている。

唯一分かるのは、これからも乗り続けるのだろう、ということだけだ。

幼い頃、街をゆくバイクに憧れを持ち、自然と自分も乗るようになった。

ハーレーに乗っているとき、まぎれもなく、自分はこの瞬間、主人公なのだと思える。

社会にいると、ふわふわと自分の立ち位置が分からなくなることがある。そんな不安を覚えたから、本能的に、夜、アイアン1200を駆り出したのかもしれない。

再びカフェインを摂取し、心を落ち着かせる。これで帰るのか……いや、まだまだ走り足りない。

ではどこへ? カフェにいても行き先は浮かばない。跨れば、自然とアクセルは開き、ハンドルは進路を示すだろう。

たった数十分離れただけで、アイアン1200の鼓動を愛おしく感じる。もうちょっと走れば、きっとこの衝動も収まってくるはずだ。そう信じてセルを回した。

野獣が唸り声を上げるように、エンジンが始動する。スリルを携えた散歩の再開だ。

月はまだまだ高い。朝の遠さを嬉しく思う。

取材協力:bakuroCOMMON
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ヘルメット:クラシックレトロタンク3/4ヘルメット(ブラック×ホワイト)
シャツ:アップリケ・プレイド・スリムフィット・シャツ

Text:西野 鉄平
Photos:安井 宏充

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