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北アイルランド、バイクがつなぐ友情。ベルファスト市街からコースト・ロードへ、アイアン883が駆け抜ける

2018.07.06

ホワイトヘッドからコースト・ロードへ、絶景の海沿いをツーリング

キャリックファーガス城をあとにし、海沿いの主要道から今度は細い道をひた走る。先導してくれたカメラマンのスティーブンは、バイクで追いつけないほどの速度でクルマをどんどん飛ばしていく。バイクを停めたとき、ウェズと目を見合わせて彼の運転にあきれかえるほどの速さだ。

牧草地が多い細道の路面状況はけっして良いとは言えず、まさに“吹っ飛ばされる”勢いだったが、アイアン883のツインショックは丁寧にギャップに応えてくれる。ストリートグライドスペシャルを駆るウェズもまたなかなかの腕前で、この巨大な車体を難なく乗りこなしている。

公道ラリーを走っているかのごとく飛ばしながら3台がたどり着いた場所は、海辺の小さな集落だった。ほんの数十軒だが、カラフルな色で彩られた家々が立ち並ぶこのエリアは、ホワイトヘッドという集落だ。

今で言う、インスタ映えする街並み。

ここは19世紀のビクトリアンやエドワーディアンと呼ばれる様式の家がそのまま残っている場所で、当時盛んだった海浜リゾートの名残なのだそうだ。今で言う“インスタ映え”するかわいらしい街並みに、次々とドライブがてら立ち寄り写真を撮っていくクルマも多かった。

ホワイトヘッドからさらに小道を進む。半島状になっているアイランドマギーからブラウンズベイへ。ときおり家が現れるほかは、牧草地か森が続き、その向こうには青い海。どんどん道が狭くなっていくにも関わらず、スティーブンは相変わらず飛ばしていく。

そろそろ景色を堪能したいよ……と心の中で叫んでいると、何の変哲もない小道でスティーブンがクルマを停めた。

目の前に広がる青空と海のコントラスト。エンジンを止め、訪れたのは静寂ではなく、鳥のさえずりと木々を揺らす風のざわめきだった。

バイク乗りの気持ち、わかってるなあ。スティーブン、やるなあ! 

有名観光地はたいていバイクを降りての散策や見学がセットになっていて、意外と時間を取られる。見どころある風光明媚な場所は、そこを目指す他の観光客も多くてじっくり堪能できないことが多い。そうではなくて、名もない場所だったとしても、こうして気持ちのよい自分だけの場所を見つけることもまた、ツーリングの醍醐味だ。

おいしい空気を味わったあと、スティーブンとはお別れ。マン島TTレースのオフィシャルカメラマンとしても活躍する彼は、TT直後の忙しい時期にも関わらず、時間を割いてくれ、とても感謝している。午後はウェズと二人、2台でのツーリング。主要道路から今度は有名なコースト・ロードへ向かう。

この道路の入口には記念プレートが掲示されていて、それによれば1832年から10年がかりで開拓されたそうだ。北海道の襟裳岬に至る黄金道路のようなものか。

コースト・ロードの開拓記念碑。

コースト・ロードの途中にあるパブでランチをいただく。わたしはベイクドポテトに山盛りのエビのオーロラソース和えが乗ったプレートを。ウェズはチキンのフライをチョイス。ワンプレートにディッシュとサラダやポテトなどを盛ったメニューが、イギリスやアイルランド圏での定番ランチだ。

バイカーに国境はない

お腹が満たされたところで、さらにコースト・ロードを北上。バイカーが集まるカフェやスポットがあれば行ってみたいなと事前にウェズにリクエストしていたところ、週末はライダーが集まるスポットがあるという。

到着したのはグレンナームという小さな港町。ちょっとした広い歩道に、週末になるとライダーが集まるのだそうだ。とりたてて有名カフェがあるわけでもなく、インスタ映えする場所というわけでもなく。

「平日の昼間だから、今日は台数が少ないんだよね」

とウェズは言うが、それでも次々にライダーたちが立ち寄っては、言葉をかわしたり、タバコをくゆらしたり、向かいにあるカフェでアイスクリームを食べたりしている。

週末はバイクで埋まるというライダースポット。

「みんな友だちなの?」

思わずウェズに尋ねると、「いやぜんぜん知らない人ばかりだよ」と言う。
なるほどライダー同士なら、知らない人とでもバイクを媒介にして自然と会話が始まるのだ。これは日本でも、アイルランドでも同じだ。

そこにいたハーレーのバイカー二人は偶然にもウェズの店のお客さんたちで、調子はどう?なんて話しをしている。日本から来たYukiだよ、バイクジャーナリストでマン島TTレースに20年も通っているんだよ、とウェズは紹介してくれた。TTレースは、こちらの人なら知らない人はいないほど有名なレース。TT、という言葉が出てきただけで彼らの目つきが変わるのがわかるほど、引きが強いパワーワードだ。おかげで、すぐに彼らの輪に溶け込め、バイク談議が弾んだ。

2005年モデルのソフテイルと2010年モデルのXL883スーパーローのお二人。バイカーファッションも決まっている。

ワンデーツーリングだったが、ベルファストの市街地から北アイルランドの名所コースト・ロード、そして普通の旅行ならなかなかたどり着くことができない小さな集落まで、密度の濃いバイクの旅を満喫することできた。

それもこれも、マン島でつながったウェズとスティーブンのアテンドがあってこそ。バイクの歴史を作り上げたマン島TTレースで知り合ったかけがえのない友だち、ウェズとスティーブン、そして快くレンタルバイクを手配してくれたH-D ベルファストの皆さんに感謝したい。

Text:バイクジャーナリスト 小林 ゆき
Photos:Stephen Davison
小林ゆき
取材協力:Harley Davidson Belfast

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