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北アイルランド、バイクがつなぐ友情。ベルファスト市街からコースト・ロードへ、アイアン883が駆け抜ける

2018.07.06

バイクジャーナリスト、小林 ゆきさんが毎年取材に行っているというマン島TTレース。今年はアイルランドのハーレーダビッドソン正規ディーラーに勤める友人からの手紙に誘われて北アイルランドまで足を伸ばし、タイタニックで有名なベルファスト市街から、名所コースト・ロードでのツーリングを楽しんだよう……。

初めてアイルランドを訪れたとき、友人のクルマでちょっと走っただけでも美しい景色に魅了された。いつかこの地をオートバイで走ってみたいと願っていたところ、ふとした偶然から北アイルランドをハーレーでツーリングするチャンスが巡ってきた!

旧知の友人が現地の正規ディーラーに勤めていることもあり、ハーレー公式レンタルバイクを利用させてもらうことにしたのだ。「できれば新しめのスポーツスター系がいいな」とリクエストしたら、なんと2018年モデルの『アイアン883(XL883N Iron 883™)』を用意してもらえることになった。友人もその日は休みを取ってツーリングに同行してくれるという。

タイタニックで知られるベルファストの街並み。丘陵地帯が続く牧歌的な田園風景。海沿いの美しくダイナミックな景色。ワンデーツーリングだったけれど、アイルランドをアイアン883でおおいに堪能してきた。

北アイルランドからの手紙

「危なくないの?」

23年間毎年通っているマン島への旅の帰りに北アイルランドに寄る、と幼なじみに話したら、こんな反応が返ってきた。日本人の北アイルランドに対するイメージなんて、そんなものかもしれない。いまだ物価が馬鹿高いだけのニッポンと信じている外国の人のように。

何十年前の話をしてんの、紛争があったのって40年くらい前のことだよ、なんて話をしつつ、プライベートレッスンを受けている英語の先生が見せてくれた写真を思い出していた。わたしの英語の先生はイギリスの元軍人で、まさに70年代から80年代にかけてのアイルランド紛争に赴いていたのだった。iPadの中に収められた古ぼけた写真は、自分が子どものころにテレビで見ていた紛争のニュース、そのものだった。

2001年と2009年に訪れた北アイルランドは紛争のイメージとはほど遠い、緑が美しく、人々もとても親切な平和な国だと感じた。

ベルファスト市庁舎。

政治、宗教を問わず、ベルファストの労働者として団結しよう、というメッセージが掲げられている。

さて、今年はひょんなことから北アイルランドへの旅をすることに決めたのだった。きっかけは、マン島で知り合った北アイルランドの友人から一通のメールが届いたことから。

「今年もTTに来るんだよね?」
※TT:マン島TTレース(The Isle of Man Tourist Trophy Race)のこと。マン島の公道を閉鎖して行われる現存する世界最古のオートバイレース。1907年初開催。

彼、──ウェズと知り合ったのは、わたしがマン島で定宿にしているホームステイ先だった。ウェズは北アイルランドから愛車でツーリングも兼ねてマン島TTレースにやってきて、仲間たちとパブで飲んでいたところ、ホームステイ先の家主サラと知り合ったという。そのまま、ウェズは仲間たちとテントを畳んでサラ宅に転がり込んできた……、というのが最初のきっかけだ。

マン島で知り合った友人、ウェズが今回のツーリングをサポートしてくれた。

公道レースが盛んな国、アイルランド

それ以来、毎年ウェズたちはサラ宅に来るようになったが、ウェズはその後、北アイルランドの有力チームCDレーシングのメカニックとしてマン島TTレースに来るようになりサラ宅に泊まることはなかった。けれども後に、ウェズのおかげで北アイルランドで行われている公道レース、ノースウエスト200(通称NW200)を見に行くことができた。

そう、公道レースが盛んな土地柄であるアイルランドは、「King of Mountain」と称されるジョイ・ダンロップやその弟のロバート・ダンロップ、また現在若手でもっとも活躍しているロバートの息子マイケル・ダンロップなどを輩出している。

なんの変哲もない普通の道路だが、実はここは公道レースのコースとなっている。レース時には閉鎖され、1,000ccなどのスーパースポーツバイクが走る。

道路を閉鎖して行う公道レース、それもオートバイによる公道レースは、レース専用サーキットで行うレースが一般的になった現代ではもはや特殊なモータースポーツと言っても過言ではない。

その公道レースでアイルランド人が強いのは、バイキングの血が流れているからだ、という説がある。ジョイ・ダンロップが自宅近くの公道で、ナンバーのないレーシングマシンの慣らし運転をしていても誰もとがめなかったなんて話がまことしかやかに流れている。あるいは、ここ10年でも新たな場所で公道レースが始まるなど、公道レースはもはやアイルランドの文化の一つなのだ。

「今年もTTに来るんだよね?」

ウェズからのメールは季節の挨拶のようなもので、マン島に行けば会えるし、行けなければ近況を報告しあうという年賀状のようなものだ。

「ウェズはTTに来ないの?」

聞き返すと、泣き顔のスタンプが返ってきた。あんなに毎年欠かさずマン島に来ていたウェズだが、ここ数年は仕事の都合で来られずにいる。

「そう言えばウェズは最近、バイク屋さんに勤めてるんだよね、何系のバイク屋さん?」

「ハーレーだよ」

「えっ?!ハーレー!」

ちょうど、マン島行きのチケットを取ろうとしていた矢先の出来事だった。ウェズとのやりとりで、とっさにひらめいた。ハーレーでアイルランド、いいねぇ!

「ねぇねぇ、そのお店って大きい? 正規ディーラーさん? レンタルバイクとかやってる?」

聞けば、アイルランド島で一番大きい正規ディーラーだそうで、公式システムでレンタルバイクをやっているとのこと。レンタル可能かどうか聞いてもらうと、ほどなくして、ニューモデルを用意できると連絡があり、スケジュールを変更してマン島TTの帰り道にアイルランドに寄ることに決めた。

TTレースの余韻が残るなか、スチームパケット社の古いフェリーに乗ってベルファストに向かった。

マン島と北アイルランドのベルファスト、アイルランドのダブリン、イギリスのヘイシャムとリバプールを結ぶ世界最古の定期旅客船会社スチームパケット社のフェリーでベルファストに向かう。

【次ページ:アイルランドのハーレーダビッドソン正規ディーラーへ!】

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