Freedom Interview
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1977年型との運命の出会い。お笑い芸人・ピース綾部祐二さんと2台のビンテージハーレー。気になるNY話も!

2017.01.27

自分が生まれた年にアメリカで誕生した1台のハーレーとの出会い。そして、ちょうど40歳になる年から始める新たな挑戦。「すべては運命」と語るピース綾部祐二さんに、愛車と現時点の思いを聞いた。

ケンコバさんから一言。「ザコは乗るな!」

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2017年が明けた都内某所。細い路地を入ったスタジオの1階で待っていると、遠くからそれと思しき音が響いてきた。決して大音量ではないが、低くうねるような重低音が緩やかな波のように伝わってくる。やがて姿を見せた黒い影。備わるシートが単座なので当然ではあるけれど、その人は意外にもソロで現れた。

「移動はいつも一人。コイツで動くこともしょっちゅうです」
何かと話題を振りまくお笑いコンビ、ピースの綾部祐二さん。コイツと呼んだのは、1977年型の『カフェレーサー(XLCR CAFE RACER)』。生産から40年を経たなりのヤレた感じはあるが、それは現役として乗り込まれた味と表現するほうがふさわしい。

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「コレとの出会いは不思議なんですよね。3年位前、仕事に行く途中にいつもと違う道を通ったんです。なぜそっちに行ったのか、自分でもよくわかりません。そこで通りかかったバイク屋さんの店先にXLCRが置いてあったんです。何だこれは!と目が釘付けになって…。でも、僕はその時にこのバイクのことを全く知りませんでした」

それもそのはず。XLCRというモデルは、現物を生で見ること自体が稀な存在なのだ。ハーレーダビッドソン2代目社長の息子で、ローライダー等の大ヒット作を生み出したデザイナーのウィリアム・G・ダビッドソン、通称ウィリーGが「自分が乗りたいオートバイ」として発表したのがXLCRだ。

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着座位置が低い従来のラインナップを裏切るかのような水平基調のフォルムは、70年代初頭のモータースポーツで活躍したXRTTロードレーサーとXR750フラットトラックレーサーに触発されたものだ。そのレーサー譲りのスタイルを実現させるため、強度と剛性を高めた新設計のトライアングルフレームを投入。加えて、ビキニと呼ばれる小さなカウルを備え、当時のヨーロピアンスタイルに仕上げた。しかもその名に、英国発祥とされる街乗り用カスタムのセンスを競ったカフェレーサーをそのままあてた。しかし、従来のハーレー文脈とはまったく異なる斬新さに本国アメリカではあまり受け入れられず、1977年から78年の間に約3400台が市場に出ただけで生産が終わった。幻の名車として特別な価値が出たのは後のことである。

「何にも知らなかったけれど、100回くらい見た映画の『ブラック・レイン』でマイケル・ダグラスが乗っていたのとよく似ていたんですよね。それ以上に驚いたのは、僕が生まれた1977年型だったことです。しかも店員さんも同い年。これは何かの縁に違いないと思ったんです。そこで、バイク好きのケンコバ(ケンドーコバヤシ)さんに電話しました。オリジナルのXLCRはどうですかと聞いたら一言、『ザコは乗るな!』。ケンコバさんにとっても気になる1台だったみたいで、明日の朝になってもまだ思いがあるなら買ってよしと言われました。翌日の朝ですか?午前8時半に教習所へ申し込みの連絡を入れて、午前10時には入校しました」

“77”との深すぎる縁

気持ちが入った教習所通いは2週間で終わった。しかし、オリジナルにこだわったパーツの手配やオーバーホールに時間を要し、XLCRが手元に届いたのは運命的な出会いから5カ月後だった。

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「教習車が883でした。懐かしいなあ」。現在のハーレーも見てもらおうと用意した 『アイアン883(XL883N IRON 883™)』を前にして綾部さんは笑顔になった。ブラックフィニッシュのパーツをまとったダークカスタムスタイル。オリーブゴールドのフュエルタンクを「渋い」と評した。

「XLCRと出会ってからハーレーについて詳しくなりましたよ。今も最新モデルはチェックします。ただ、コイツとは結婚する約束があるんで(笑)。でも、ハーレーが基本的に空冷エンジンを貫いているところは尊敬しますよね。とは言えXLCRのエンジンは熱くなりすぎる!」
ようやく乗れるようになったXLCRだが、旧車の洗礼はなかなか厳しいものがあったそうだ。特にクラッチレバーの重さは容赦がなく、30分乗っただけで腕がパンパンになるのだという。さすがに辛いと懇意にしているメカニックに訴えてみたものの、「綾部さんはこだわる人でしょ。オリジナルを崩すのはお勧めしないよ」と言われ、慣れることに専念したそうだ。

「けれど右太腿の内側に当たる熱だけは我慢の仕様がなく、自分のパンツをカスタムするようにしました。中に生地を一枚貼るんです。それでなんとかしのげるようになりました。だからコイツは冬に乗るほうが楽ですね。仕事の移動にも使うし、地元の茨城に帰るときも乗る。こっそり好きな場所は、東京ディズニーランドの外周です。ヤシの並木がアメリカみたいでね。そうそう、街中でよく声をかけられます。僕だからじゃなく、XLCRの珍しさで」

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実は、ハーレーとの巡り合わせはXLCRに留まらなかった。またしても1977年型の希少なモデルのキーを手にすることになったのだ。

「スポーツスターのXLHです。ペイントが挑発的とされたせいで300台弱しか生産されなかった超レア物。コレクターの手に渡ったらガレージの奥で眠っちゃう。1977年にこだわる綾部さんだから先に情報をお伝えしただけですって言われたんですよね。迷いますよねぇ。それが年末で、さぁどうしようと電話を切った後のiPhoneを見たら電池の残量が77。つけたテレビでやっていた救命救急の特番でアップになった心電図が77。いやいや、ウソでもネタでもなくて、あれは参りました。やっぱり77には縁があるみたいです」

そうして新たな同い年を仲間にした。2台のビンテージハーレーと綾部さん。いずれも2017年に40歳を迎えることになる。

僕は僕の運命を楽しみたい!

現時点の綾部さんを前にして聞かずにおけないのが、2016年の秋に本人の口から発表された“レッドカーペット”宣言だ。ハリウッドデビューを果たすため、ニューヨークに活動拠点を移すのが2017年の4月。しかしなぜハリウッドがある西海岸ではなく東のニューヨークに行くのだろう。

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「ニューヨークは地球一番の都市。社会科の先生が授業中に言ったその言葉がずっと頭から離れなくて、いつか外国に行くなら最初はニューヨークだと決めていました。ちょうど20歳で芸人になる決意をして、それからはずっと忙しい日々が続いて、お陰様で売れるようになりましたが、今度は休みが全然取れなくなった。頑張って働いて、ようやくもらえた休暇で行ったニューヨークが凄かった!上手く言えないけれど、自分の感性レベルが一気に高まるような、かつて味わったことのない興奮が沸き上がってきたんです。それからは年1で行くようになりました」

そこまでの経緯だけなら、綾部さんのニューヨーク行きは10代の夢を叶えたに過ぎない。節目の40歳から始める新たな夢への挑戦には、やはり縁と呼ぶべき背中を押す力が働いたそうだ。
「ご自身で事業をされている熟女の知り合いと食事をしたときに、綾部君はニューヨークが合うと突然言われたんです。僕がニューヨーク好きだと一言も伝えていないのに。その方曰く、私も年1回行くけれど、あの街のパワーとスピードは世界一。そこで自然とトップギアに入る自分を確認しに行くんだそうです。あなたもトップギアが好きだから絶対にやっていけると。それに感化されて、そうこうしている内に相方が2015年に芥川賞を獲っちゃった。自分も何かしなくちゃと思ったタイミングで、40歳が目前に迫っていたんです」

そして2016年1月末、テレビも同行したアメリカ行きで道を決めたという。最後にニューヨークへ渡ったこの旅では、ラスベガスでハーレーをレンタルし、レッドロックという荒野を走り回った。

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ただやはり、綾部さんの挑戦に不安を募らせる声は大きい。これまでのキャリアを捨てる理由が周囲には理解できないからだ。
「運命絶対論者なんです。この世に偶然はない。すべて必然。親にそう言われて育てられました。だから自分がニューヨークに行き、やがてレッドカーペットを歩く人間になりたいと思ったことも運命。それに従うだけ。心配してくれる皆さんには感謝しますが、僕にとってこれまでのキャリアはどうでもいいんです。だって、20歳のときには茨城の工場で椅子をつくっていたんですよ。そんなヤツが芸人になれた確率と、芸人になった今からアメリカで成功する確率をくらべたら、断然後者のほうが高いと思いませんか?
ただ見たいだけ。ニューヨークのカフェで気取っている自分や、レッドカーペットを歩いている自分を映画のように眺めて、自分だけが楽しみたいんです。何しろ世界一の僕のファンは自分ですから。周りからどんなにアホだと言われても、僕は僕の運命を楽しみたい」

この時点の思いを綾部さんは淡々と語った。まさしくそれがすでに決まっていた運命だと悟っているかのように。ひとつ気がかりなのは、結婚を誓ったXLCRのことだ。

「向こうで置ける場所が見つかったらすぐに呼びます。アイツとニューヨークを走るシーンも、僕の映像の中では想定済みですから」

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Text:田村十七男
Photos:横山マサト

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